第八十一時限目

(誰が言うか…っ!)




「言わないよ?あっちゃんの話題なんか出ないし。」




(うわ、今の少しきつかったかな…)




滅多に言わない言い方。




敦子先輩は一応先輩だし、あたし自身こんな嫌味っぽい言い方をするつもりは無かった。



「そうだよね♪いや、口滑らせてバレたら大変だからさ~」




「…言わないから安心して?じゃぁ。」




「うん、あっ今日は部活おいでね~!」






『もう敦子先輩に近づきたくない』






一瞬、何故かそう思ってしまった。




本当に何でか分からない。




ただ




敦子先輩といると自分の嫌な部分が全て表に出てしまいそうな気がして…怖かった。



それから普通に授業が始まり、あたしと拓は特別会話をする事も無くあたしはタカと、拓は隣の席の男の子とそれぞれ会話をしていた。




時々霧島君の視線を感じたり休み時間に話し掛けられたりもしたけど、お互い今までと変わらず普通に接していた。







そして昼休み。




タカと昼ご飯を食べていると、菜緒が教室に入って来た。






「結芽」




「あ、菜緒おはよ―っ」




「タカちゃん、結芽借りてい?」




あたしの挨拶を無視してタカに承諾を得る菜緒。




「う、うんいいけど…?」




「ごめんねっ、結芽行くよ。」




「行く?何処に?」




「うるさい、黙ってついて来い。」




「だってご飯…っ」




「5時間目に食べなさい」




「何それ~っ」



あたしは菜緒に腕を掴まれ、無理矢理中庭へと借り出された。




何となく菜緒の足取りが激しい。




「菜緒…さん?」




「……」




「あの~」




「なんで呼び出されたか分かってる!?」




あたしを見る事もせず、勢いよく歩きながら菜緒が言う。




「…9割方検討ついてます…」




「なら中庭着くまで黙ってて。」




「すいません…」







昼休みも残り15分。




中庭に着くと、桂太君がパンをかじりながら携帯をいじっていた。







「桂太っ、結芽連れてきた。」




「お、問題児登場。」



「桂太君…昨日ぶりです…」




「結芽はそこに座りなさい。」




ちょっとした段差のコンクリート部分に腰を下ろすと、菜緒にいきなり頭を叩かれた。




「いでっ…」




「あたし、あんたと友達辞める」




「え…っ?」




思いもよらない菜緒の発言に、あたしはかなり驚いた。





「何でっ!?」




「あんたといると疲れる…ストレスしか溜んない。」




「昨日の事は内緒にしてて本当に悪かったと思ってる…でも何も友達辞めなくたって…」




「結芽ちゃん」




桂太君がなだめる様に菜緒の頭を撫で、こう言った。






「昨日、俺と別れてからどうしてた?」




「え…」




「ちゃんと家に帰ったの?」




「……」




黙るあたしに桂太君が溜め息をつく。





「霧島ん家、行ったのね?」







(どうして知ってるの…?)






あたしは無言のままでただ頷く。





桂太君と菜緒がお互い顔を合わせ、今度は菜緒が口を開いた。




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