第七十八時限目

ブーッ、ブーッ、ブーッ、ブーッ………………





霧島君の携帯が、畳の上でブルブル震えていた。




(何だろ…?アラームかな…)




霧島君の側に寄りアラームを切ろうとした時、あたしは目を疑った。








『着信』







『敦子さん』








(敦子…?)




携帯を手に取った瞬間着信が終わり、そして直ぐ様メールが受信された。




(敦子ってあっちゃんなの…?)




あたしの中である考えが葛藤する。





もしかしたらメールは敦子先輩からかもしれない




でも実は『敦子』ってゆう名前の別人かもしれない…






霧島君を見ると、気持ち良さそうに寝ている。



(霧島君…ごめんね…っ)







人間としてかなり最悪な行動。





同じ携帯の機種なので使い方は簡単。








あたしは手慣れた手つきでメールボックスを開き、霧島君へ送られて来た『敦子』とゆう名の本文に目を通した。





「どーゆう意味…?」




寝てないせいなのか、それともただのバカなのか…




あたしはメールの内容の意味が理解出来ない。





《結芽とヤった?》






「『ヤった』…?」




あたしはそんな有名な人間じゃない




『敦子』とゆう名前であたしを知ってる人…



「やっぱりあっちゃん…?」




(何であっちゃんが霧島君と繋ってるの?)




もしかしたら




今までの履歴を見れば分かるかもしれない




何かが分かるかもしれない…





もう夢中だった。




あたしは受信歴を遡り、『敦子』の名前を探した。





《結芽に告った?》




《結芽と別れたら後で報告すること!》




次から次へと出てくるあたしの名前。




(一体何…?怖い…)




どーゆう関係なんだろう




あたしは何をされるの?





ズラっと並んでる『敦子』の履歴




混乱状態になりながら、次のメールを開こうとした時。







「何してんの?」




「え…?」






視線を携帯から斜め下へと移してみる




すると、そこには目を開けて寝ながらじっとあたしを見ている霧島君がいた。





「それ、俺の携帯だよ?」




固まるあたしに、霧島君がニッコリと笑う。



(ヤバ…見つかった)




「あ、あれ…?これあたしんじゃない…?」



色は違うけど同機種。



バカなあたしがとっさに考えた言い訳はこれしか無かった。






「まさかっ(笑)普通見分けられるっしょ!」



「ハハハ…寝ぼけてました…」




見苦しい言い訳。



気まずいあたしは霧島君と目を合わせられず、握ったままの携帯を見ていた。






(怒ってるかな…怒ってるよね…?でも…)




あんなメールを見つけてしまった以上、とても知らんふりなんかしていられない。





「あのさ…」




意を決して、あたしは霧島君に問い詰めてみる事にした。






「質問してもいい?」



「いいよ、何~?」




起き上がりテレビを付ける霧島君。




「あのさ…っ、メールのっ…」




「あ、その前に携帯返して~?」




「え?あ、ゴメン…」



「んで?」




(何で弱気になんの…しっかりしてよあたし…っ)




「メールの事なんだけどっ、『敦子』って名前の人誰?」




緊張で握りしめている両手が汗ばむ。




「見ちゃったの?」




リモコンをいじりながらサラッと言う霧島君。




「みっ、見た!あの内容何?」




「何処まで読んだの?」




「え…?」




「メールの内容、何処まで読んだのって。」



「あ、あたしと別れたら報告しろとかどうとかって所…」




「なぁ~んだ!」




「は?」




眉間に皺を寄せるあたしに、霧島君は背伸びをしながらまた寝そべった。





「俺からは言えな~い♪」




「何で?」




「口止めされてるから!」




「誰に?」




「敦子さんに!」




(口止め…?)




「『敦子』って剣道部の敦子?」




「そうだよ?」




「何で知り合いなの?」




「内緒~♪」




ふと、あたしの脳裏に桂太君と菜緒の言葉がよぎった。




『黒幕…』


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