第六十八時限目

アーケードの中を無言でひたすら歩き、あたしと桂太君はある大きな公園までやってきた。




夜とゆう事もあり、公園の中はアベックがイチャイチャしていたりもする。





(うわぁ…本当に腰に手を回して歩いたりするんだ…)




目を反らす所か、興味津々で凝視してしまうあたし。




「結芽ちゃん…それかなり見すぎだから」




見かねた桂太君が、立ち止まっているあたしの後ろに回り背中を押す。




「え、だって見られてもいいからあんなに引っ付いてるんでしょ?」




「そうだとしても、結芽ちゃん変態にしか見えないよ(笑)」




「桂太君と菜緒も夜はあんな感じなの?」




「はぁっ!?」




サラッと言ってしまったオヤジ的な発言。




「それ、セクハラっ!」




実は意外とシャイだったらしく、桂太君は照れながら頭を掻きむしる。




(イヒヒ…面白い)



「今度菜緒に聞いてみよ~っ!」




「…聞けば?俺も今日の事全部吐いて貰うつもりだし~」




(あ゛、そうだった…)



今日、表向きは『風邪』で学校を休んだ事になっている。




それに一応菜緒には『生理痛』とゆう事でメールを送った。




だから、菜緒繋がりで桂太君もそう聞かされていたんだと思う。




「とにかく、もうすぐドラムの人が迎えに来るから話は帰りに」




「迎え?ここじゃないの?」




「いや、みんな腹減ってるし…他の皆は直接行くみたいだから」




「…緊張してきた」




「大丈夫(笑)みんないい人ばっかりだから」



そんな中、突然桂太君の携帯が鳴った。




「はい…あ、あっくんすか?はい、今から向かいます」




「…ドラムの人?」




「うん、そこの道路に停まってるから早く来いって」



「あたし、どこか変じゃない?」




「お見合いじゃないんだから…(笑)ほら、行こっ」




朝から一度も化粧を直さず、ましてや海にいたから髪は砂まみれでゴワゴワ。




「ねぇ、なんかあたしの前髪妖怪アンテナ立ってない?」




「それ、今時のスタイルじゃないの?」




「まぁね、頑張って立たせて来た…ってんな訳ないでしょっ!」




(本当、こーゆう所菜緒そっくり…)




「バンソーコ使う?髪に貼って抑えたら?」



「いらんわっ!」




「だよね(笑)…あ、あの車だよ!」





黒色の、いかにも車好きをアピールした様なワンボックスの改造車。




「ねぇ、なんか車の中青く光ってるけど…」



「ブラックライトだよ(笑)」




「…ドラえもんの道具みたいだね」





あたし達が車の前に辿り着くと、運転席からはカリメロみたいな頭をした男の人が出てきた。




乗ってる車とはかなりギャップがある見た目に、あたしは目が点になる。




「どうもっす」




桂太君があっくんにペコリとお辞儀をした。




「は、初めまして…」



あたしも桂太君に続いて頭を深々と下げる。




「どうも…桂太、この子がボーカルの子?」




「はい、竹内結芽ちゃんです」




「そっかぁ…結芽ちゃん、俺あつしって言います。宜しくね!」




(わ…この人笑うと目が無くなる~)




サラサラのカリメロヘアーにチェックのシャツと黒いパンツ。




背はあたしより少し大きい位でとにかく細い。




「こちらこそ宜しくお願いします」




「あれ?あっくん、他の皆は?」




「もうファミレス着いてるって!待たせちゃ悪いから俺等も急ごっ」




桂太君に促されあたしは助手席、桂太君は後部座席にと座り、街から少し外れたファミレスへと向かった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る