第六十七時限目
「とりあえず今はまだ友達でいよ!?」
そう言い、歯をわざと見せてニカッと笑って見せた。
「うん、分かった」
そして夕方。
あたしは7時から桂太君達との約束がある為、そろそろ帰る事にした。
「今日はありがとう。楽しかったよ」
「俺も笑った(笑)」
「……あっ、猫!受け取れる位になったら教えて!?」
「了解!じゃ神社まで送るよっ!…あ、ねぇ、今日夜電話していい?」
「う~ん、今から街に用事あるから電話は無理かも…ごめんね?」
「今から街?買い物かなんか?」
「ちょっと友達と待ち合わせなの」
あたしはエンジンが付いてあるバイクにまたがる。
「街か~暫く行ってないかも~」
「霧島君、部活忙しそうだもんね」
「きぃ~めたっ!」
「何?」
「俺も一緒に今から街行くっ!!」
バイクが急に走り出す。
驚いたあたしはとっさに霧島君の脇を掴んでしまった。
「い、一緒にって…」
「大丈夫っ!行く時だけだから!街に着いたらすぐバイバイすればいいでしょ?」
(この人…強引なんだか計画性が無いんだか…さっぱり分からん)
「とりあえず神社に行って、竹内のチャリ取らなきゃね~っ!」
そう言い、霧島君は鼻歌を歌いながらバイクを走らせ、朝通って来た道を戻り神社に到着。
降ろされたあたしは自転車を取り、霧島君がバイクで一足先に待っている駅へと急いで向かった。
そして駅に着くと、霧島君があたしの分の切符も買って待っていてくれ、そのまますぐ来た電車に乗り街へと向かった。
4つの駅を通り過ぎ、あたしは友達に霧島君と一緒の所を見られ、変な誤解をされてしまうのではないかとハラハラしながらも無事に到着する事が出来た。
「改札まで一緒に行こ?改札出たらバイバイするから」
「いいよ!」
ホームに降り、改札口に行くための長い階段を登る。
「竹内、息切れてる(笑)」
苦笑いしながらも、霧島君があたしの手を引っ張ってくれる。
「人が沢山いすぎて酸素薄い…」
「剣道部でしょ~!?」
「最近おろそかにしてたもんで…」
人混みをすり抜け、あたし達は一段ずつゆっくりと登って行く。
そして、階段も半ばに差し掛かった時だった。
「結芽ちゃん?」
背後から聞き慣れた声がし、あたしは後ろを振り返った。
「桂太君っ」
桂太君はあたしと霧島君を見るなり、顔から笑顔が消えた。
霧島君はそんな桂太君を気にもせず、相変わらずあたしの手を握りしめたまま。
(うわ…桂太君怒ってるよ…)
背中に冷ややかな空気を感じながらも、やっと階段を登りつめた時…
桂太君が、突然あたしの手を霧島君から奪い取った。
「ありがと、こっからは責任持って俺が結芽ちゃん預かるんで」
怖い表情の桂太君とは反対に、霧島君はいつもの爽やかスマイル。
「そ?じゃ宜しく~竹内、また明日ねっ!」
そう言い、霧島君は一足先に改札へと歩いて行った。
「桂太…君…?」
「……」
明らかに分かる気まずい空気。
でも、更に空気を気まずくさせてしまう桂太君のこの発言…
「結芽ちゃん」
「はい…」
「後で腐る程質問するからね」
「…はい…」
「とりあえず、今から待ち合わせ場所に向かうから」
そう言い残し、桂太君はあたしの手を放して速足で歩き出した。
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