第六十五時限目

「ねぇ竹内、海行かない?」




「海?」




「コンビニで飯買ってさ、海で食わない?」



「ピクニックだね(笑)」




携帯を見ると、まだ11時。




「俺、変態じゃないでしょ?(笑)」




「うん(笑)霧島君は霧島君っ!」




「家に沢山お菓子あるからさ、猫戻しがてら持ってくるね♪」




「うん。」





(霧島君とならいい友達になれそう…)








久々に心が和んだ。




自然と顔が笑顔になる。




「今日は綺麗な空だなぁ…」




風に吹かれてゆっくり進む雲。







「お待たせ~♪行こうっ!」




「うん。」




霧島君も戻ってきた姿は制服ではなく私服。



「これなら気兼なくまったり出来るっしょ♪」




「そだね(笑)」



こんな風に笑っていても





完璧に君を忘れてる時間なんて無かったんだよ?




綺麗な空を見る時




夜空に輝く星を見る時




神秘的な朝日を見る時






あたしは君と肩を並べて見れたらなって思うんだ。








「竹内っ、バイク乗って♪」




「うん。」












海までは約15分。




とりあえずあたしは今日1日だけ、霧島君との時間をただ楽しむ事にした。




あれから2人で海へ行き、砂浜で放し飼いにされていた大きな黒い犬にあたしは何故かひたすら追い掛けられ、砂まみれになった挙げ句に散々犬に腰を振られた。




飼い主のおばさんは笑いながら謝ってくれ、その光景を霧島君は腹を抱えて笑っているだけだった。




その後コンビニで買ったおにぎりやサラダを食べ、その後はずっと動物の話に花を咲かせた…





「竹内は何の動物が好き?」




「あたしは基本的に何でも好き。でも、魚類はダメなんだなぁ…」




「何で?可愛いじゃん(笑)」




「魚って触れない…しかもビチビチ動かれるのがどうも…」




「え~、俺は魚が口パクパクしてんの可愛いと思うけどな~」




「そうゆう霧島君は?何が好き?」




「俺は犬!!勿論猫も大好きだけど」



「どうして犬なの?」



「う~ん、犬ってご主人に忠実じゃん?ご主人にだけ自分の心を開くって言うか…」





確かに。




家の犬もそうだ。




家の犬は、ペットショップで誰にも購入してもらえず、寂しそうな顔で骨をかじっていたらしい。




それを兄貴が今の奥さんとまだ彼氏彼女だった頃、全財産をはたいて我が家に連れて来た。




北海道犬で血統証付きのオス犬。




『広い大地で駆け回る元気な犬である様に』



そう兄貴が願い、名前を『グランド』にした。




グランドは兄貴とじいちゃんだけには忠実。



何故かあたしとお母さんは下撲扱い。




餌をあげる前に『おすわり』を注文しても必ずキレて吠えられる。



そんな生意気なグランドだけど、あたしはどんな犬よりもグランドが1番可愛い犬だと思っていた。



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