第六十時限目

一瞬の出来事に唖然とするあたし。




「いつまでも教卓の上にいたって中庭からパンツ見られるだけだよ?」




霧島君に抱き締められた感触がまだ両脇に残っている。




「霧島君細いくせに力あるんだね…っ!!」




「そりゃ竹内よりはね。俺男の子だし♪」




笑うと出るエクボが可愛くて、ついあたしもつられて笑ってしまう。




「ありがとね、実は高い所ダメみたいで…。」




「あのへっぴり見れば分かる(笑)」




「アハハ…あの、ありがとね。」




「いいよ別にっ。」




教卓を戻しながらあたしは言う。




「霧島君、何か用事?」




「ん?あぁ、サッカー部視聴覚室でミーティングしてたんだけど、竹内のSOSが見えたから(笑)クラスメイトだしね。」




「そっか(笑)ブサイクな姿さらしてごめんね。」



あたしは自分の机の上からバックを取り、ブレザーを羽織る。




「ごめんね、本当助かりました!今度何かおごるっ!何がいい?」




「マジ?じゃぁねぇ~…」




「高いのはダメだよ~(笑)」




軽いお礼のつもりで言ったつもりだった。




まさか、これがきっかけになるなんて…







「じゃぁ明日1日学校サボってどっか遊び行こっ」





顔に似合わず大胆な発言。





「…冗談?」




「マジだよ?」




「明日?」




「明日」




「サボって?」




「うんっ!」




そりゃ1年の時、他の男子に比べたら霧島君とは結構喋ってた方かもしれない。




でも……







「サボリはちょっと…」




「何で?俺竹内に見せたいもんあるんだけどなぁ。」




「見せたいもの?」




「うん。」




「何?」




「多分見たら腰砕けるよ~♪」




こーゆう誘惑には滅法弱いあたし。




正義の心がみるみるうちに溶け、ただの好奇心旺盛な子供へと変貌を遂げた。






「明日…1日だけだよ?」




「お、付き合ってくれんの?」




「だって…気になるし…。」




「じゃぁ決まりねっ!」








君が苦しい程悩んでた時に




あたしはこんな事をしてたんだね…




こんな情けないあたしの事を




君は守ってくれてたんだね…




今ならきっと…




きっと今のあたしなら君をちゃんと理解してあげれたのかな…








そして夕方。




桂太君からメールが入り、ドラムの人が来れないと言う事で顔合わせは明日の夜になった。



今日バイトに行けたはずのあたしは、正直最近行くのが面倒くさくなっていたのもあり、とりあえず1週間シフトから外してもらう事にした。







明日は1日、霧島君と過ごす。





ふと妙な罪悪感に襲われる。




「大丈夫、明日だけだから…。」





あたしは今日1日の出来事を振り返り、そしていつの間にか眠りに付いていた。



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