第五十八時限目
「ちゃんと松澤にも買ってやれよ?」
そう言い残し、田村は沢山あるプリント等をあたしの机の上に置いて職員室へと戻って行った。
唖然とするあたし。
(どうしよう…逃げたい…。)
焦るあたしに1件のメールが入る。
《さっき結芽のクラス行ったら、何だかお取り込み中だったので桂太と先に帰ります♪桂太、後でメールするって♪結芽ガンバ♪♪》
「裏切りカップルめ…」
菜緒にブーイングメールを返信しようとした時…
「おい。」
またしても、あたしの後ろから声がした。
「おい。」
あたしは恐る恐る振り向いた。
「金よこせ。ジュース買ってくる。」
拓が席を立ち、あたしの席へと歩いて来る。
「何飲むんだよ。」
「え…あ、カルピス…。」
机の上にあったお金を取り、教室の入口へと向かう拓。
(あれ?拓普通…?)
あたしは我に帰り、拓に言った。
「あの…っ、ありがとうっ。」
「………。」
(やっぱりダメか…だよね…あたしあんな事言ったし…あぁ、マジ帰りたい。)
本当はあの日の後、あたしは言い過ぎた事を少し後悔した。
あの時は頭に血が上ってつい頭に浮かんだ言葉をそのまま口に出してしまっていた。
(帰ろうかな…でもそんなことしたら拓キレるよね…。)
拓の冷たい態度にどうしたらいいのか戸惑ってしまう。
(置き手紙すれば平気かな…どうせこれからも絶交したまんまだし、いいよね?)
ドアを開け、1歩出た所で拓が急にあたしの方を振り向き、こう言った。
「お前…俺が戻るまで逃げんなよ。」
「はい…。」
さすが拓。
あたしの行動を先読みしてる。
「あたし今ならダイエット出来そう…。」
今日から絶縁した人とクラス委員。
しかも今からここで 仲良くプリント折り。
「凄い…学園ドラマみたい…。」
数分後、拓がジュースを買って戻って来た。
「やっぞ。」
「はい。」
お腹も空いたお昼過ぎ。
あたしと拓はせっせと新しいクラスの為に奉仕活動をした。
プリントを折り始めてから20分。
「……」
「……」
未だに『あ』の字の会話も無し。
(さっさと終らせて帰ろ…)
あたしは仕事のペースを早める。
「おい。」
ビクッ………
「な、何…。」
「折り方雑。もっと綺麗にやれ。」
「すいません…」
あたしは几帳面と言われているA型。
一応綺麗好きだし、休みの日も暇さえあれば部屋の模様替えとかをしたりする。
拓も同じくA型人間。
でも几帳面と言うよりは、かなりの神経質タイプ。
例えば部活。
剣道着の袴を畳む時、少しのズレも無く綺麗に折り目に合わせて畳む。
その他にも
本は同じ所に戻す。
靴を潰して歩くのを誰だろうと許さない。
時と場合によってかなりざっぱなあたしとは全く違う種類のA型らしい。
(まぁ、血液型なんてあてになんないけどね。)
クラス33人分のプリント折りを無事終了し、次は行事や時間割等を壁に貼る作業。
「これあたしやるよ。」
一応気を使って言ってみたつもり。
「んじゃ、どうぞ 。」
拓にテープを渡され、後ろにある壁にペタペタ貼って行く。
拓は何も言わずにあたしの作業をただ見てるだけ。
(終わった~。)
「次は時間割だよね。」
「これはあっち。」
拓が指さす方を見る。
そこは黒板よりも少し上にある、去年あたしのクラスに時間割が貼られてあった所と全く同じ場所。
「…結構高いよね。」
「出来ねぇなら俺やるし。」
クールな顔でサクッと言われ、くだらない意地を張るあたし。
「全然余裕。」
「あっそ、じゃヨロシク。」
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