第五十四時限目

「ブスで悪かったね…生憎あたしはこの顔で満足してますから!それにあんたがあたしを好き??笑わせんなっ!!」






これで終わり…





あたしは拓を突き飛ばして怒鳴った。





「あんたみたいなガキ、最初から対象外なんだよ!1億積まれたって絶対好きになんかならないっ!!」




桂太君と菜緒を残し、逃げる様に走り去るあたし。






後悔なんかしない




似たもの同士のあたしと拓は、きっと上手く行かない。




これでいい




これで良かったんだ…




あたしは今日、ある誓いを立てた。




『もう絶対恋はしない』




やっぱり恋なんて良いことがない。




あたしに恋なんて必要ない。








この日から、あたしは狂ったかの様に別の道を歩き出すこととなった。




あれから月日は過ぎ…




花粉が飛び散る4月。



あたしは無事2年生に進級した。




拓と決別してから3ヶ月。




あの日からあたしと拓は一言も口を聞かない日々。




クラスが隣りの為、何かと顔を合わせる事は多々あったがそれでもお互い以前の様に声を掛け合う事すらもうない。




本当に赤の他人。




菜緒と桂太君も、初めはこんなあたしと拓をどうにか仲直りさせようと、色々策を練っていてくれたらしい。




でも、そんな作戦に微動だにしない頑固なあたし達を見て、仕方なく2人は白旗を挙げた。




勿論菜緒と桂太君とは今でも大の仲良し。




そして拓にとってもそれは同じ事。




そんな微妙な関係が続いたまま春休みに入り…




そして今日、始業式が始まった。




「結芽~っおはよっ!」




「おっ、菜緒おはよっ!」





正門前。




すっかり熟年カップルと化してる菜緒と桂太君が、いつもの様に手を繋ぎながらあたしに声を掛けて来た。




「桂太君もおはよ。目覚めよさそうじゃん(笑)」




「まぁね、昨日は夕方から就寝しましたから」




「えぇっ!体腐るよ!?」




「春だからポヤポヤすんだよね~。あ、そうそうキリのいい今日からいよいよ活動するからねっ」




「へ?何を!?」




「おいおい…バンドだよ…」




「あ、あぁ…すっかり忘れてた(笑)」




随分前に桂太君から誘われてやることになったバンド。




「色々あったから放置しといたけど、もうそろそろ大丈夫でしょ?」




(色々ね…)




色々といっても9割は拓の事。




痛い部分を突かれ苦笑したあたしに気付いた菜緒が、桂太君のみぞおちに軽く肘でこづいた。




「いてっ、何だよ菜緒」




「おバカ」



「別に名前出して言ってねぇだろ?」




「女はデリケートなのっ!」




「いいからいいからっ、あたしは全然大丈夫!」




「でも…結芽あの人の名前聞くと凄い不機嫌になるし…」




あたしはモロ顔に出るタイプ。




自分では隠してるつもりでも、苦手な人や嫌いな人と話したりすると必ずと言っていい程左の口がひきつる。




「いや、本当平気。ごめんね菜緒、気を使わせて…」




「別にあたし達は…ねぇ桂太?」




「うん、俺何にも考えてないからっ!」




あたしを慰めるつもりで言った言葉に、またしても菜緒に注意される可哀想な桂太君。




(この2人…朝から癒されるなぁ…(笑))




「結芽ちゃん、とりあえず今日メンバーに会わせるから。今日バイトは?」




「あるけど…休むからいいよ!」




「大丈夫?」




「大丈夫っ!」




「じゃ、今日帰り3人で帰ろ?」




「了解っ!」




こうして話が一段落したあたし達は、新しいクラスが貼り出されてある下駄箱へと向かった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る