第三十時限目
始業式。
まだ冬休みの余韻が抜けきれてないあたしは、体育館で行われている始業式での校長の挨拶中、堂々と居眠りをこいていた。
今日は珍しく菜緒の姿がある
式が終わり教室へ戻る途中、菜緒が後ろからあたしの肩をポンと叩いた。
「約束通り来たよ~!」
「式の途中から来ただろ…初日位真面目に来いっ!」
「遅刻魔の結芽に言われても説得力無いなぁ(笑)」
「あ、やっぱり?(笑)」
教室に戻り、あたしと菜緒は先生が来るまでの間廊下に出て話をしていた。
「結芽、磯田君とどお?」
「磯田君ね…」
「あの日、結芽先に帰ったじゃん?拓、機嫌悪かったよ~?」
「何で?ケンカの途中だったから?」
「さぁ~?拓も不器用だね~(笑)」
「不器用?あいつが?」
「自分、不器用ですから…」
「高倉健似てないしっ(笑)」
「だよね(笑)」
似てないモノマネ合戦が始まり、あまりにも似て無さすぎるモノマネにあたしと菜緒は爆笑していた。
「菜緒っ!」
「あっ、桂太っ!おはよっ」
あたし達の笑い声が聞こえたのか、隣のクラスから桂太君と拓、そして磯田君が出てきた。
「何してたの?」
「桂太あのねっ、結芽の目玉の親父、凄い似てないんだよ!」
「菜緒のドラえもんのモノマネもいけてないけどね」
「桂太、こいつの目玉の親父はきてるぞ。俺未だに頭から離れねぇもん」
学校初日から喧嘩をふっかけてくる拓。
「うるさいな…拓は拓そのものがヤバイ!」
「お前っ、俺自身を否定すんなっ!」
いつもと変わりない風景。
そんな日々を、あたしは可もなく不可もなくと思っている。
『今のままでいい…』
そう思っているあたしの考えを見事にぶち壊す人物が現れた。
「結芽ちゃんっ」
(おわっ、磯田君だ…)
「ん?何?」
「昨日、夜中までメールしてごめんね?」
「あ、うん…いいよ」
「今日もメールしてい?」
(え…今日も…?)
磯田君にアドレスを教えてから毎日…
しかも徐々にメールをしている時間が増えていた。
「磯田、お前すげぇモーションかけてんな」
桂太君が半ば感心しながら磯田君に言う。
「まぁね、いずれ付き合うからっ」
(は!?誰と誰が?)
「そうなのっ結芽っ!?」
菜緒が驚いた様に口を塞ぐ。
「いや…あたしも初めて聞きましたよ、菜緒ちゃん…」
磯田君はかなりのナルシスト。
制服をだらしなく着ていて、茶髪にロン毛。
更に鼻にピアスを付け、桂太君と同じ音楽部のベースをしている『今時』の男の子だった。
磯田君の話によると、彼は1日3回リップクリームを塗るらしい。
あたしはこの時、まだ多少の引き気味感覚で磯田君を見ているだけだった。
「俺、教室戻る」
ズボンのポケットに手を突っ込みながら、拓は自分の教室にさっさと戻って行ってしまった。
「拓も辛抱が足りねぇなぁ(笑)」
桂太君が苦笑しながら菜緒に言った。
「だねぇ」
「何が?」
「結芽はもう少し敏感になりなさいっ」
(敏感…?全然話が見えないんだけど…)
ここでチャイムが鳴り、あたし達は中途半端な会話のまま自分のクラスへと戻った。
今日は午前で終わり。
部活もバイトも無かったあたしは、久しぶりに菜緒とカラオケに行く事にした。
「何処のカラオケ行く?」
「前に行った結芽ん家の近くのカラオケ、あんまり曲入ってなかったよね~」
「う~ん…じゃぁ今日は無難に駅前のカラオケにしますかっ!」
「だねっ!なんかコンビニで買って行こっ」
やっぱり菜緒がいる学校は楽しい。
あたしはご機嫌で後ろに菜緒が乗っている自転車をこぎ、コンビニで軽く食べれる物を購入していざ、カラオケへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます