第二十九時限目
桂太君には2つ上のお兄ちゃんの他に、お姉ちゃんがいるらしい。
お姉ちゃんは、お父さんと大喧嘩をしてしまい家を出て行ってしまった。
毎日桂太君が電話で話をしていたのは、自宅に衣類等を取りに行く為にお父さんが居ないかどうか確認をしているお姉ちゃんだったのだ。
拓が言ってたプリクラは桂太君の元彼女で、剥がすと携帯が汚れるから取っていなかったらしい。
「だって菜緒、ご飯食べた時…」
「だからね、桂太は事情を初めから話すのが面倒だったから、みんなが誤解してる通りあたしにも適当に言ってたんだって」
「結芽ちゃん分かった?ややこしいけどさ、俺はちゃんと菜緒しかいないよ?」
「あんまり理解してないけど…分かった…」
「結芽ごめんね?」
「いえいえ…」
どっと力が抜けた。
知らなかったのはあたしだけ。いまいち把握出来てないけど、なにはともあれ菜緒がちゃんと幸せでいる事に安心した。
「菜緒、今年はちゃんと学校来なよ?」
「うん」
(良かった…)
外は真っ暗。
明日は朝早くからバイトの為、あたしはそろそろ帰る事にした。
「ごめんね、あたし帰る」
「え?結芽ちゃんもう帰るの?」
「明日朝からバイトなの」
立ち上がり、ジャケットを羽織っていると桂太君が拓に向かって真顔で話し出した。
「拓、お前本っ当に結芽ちゃんいいの?」
「あ?別に…?」
「へぇ~」
帰る準備が出来たあたしに、桂太君はこんな話を持ち出した。
「結芽ちゃん彼氏いらない?」
「へ?彼氏?」
「うん。実はね、俺の友達で結芽ちゃんの事気に入っちゃった奴がいてさ」
桂太君に続き、菜緒が言う。
「ホラ、体育館で圭太の隣にいた男の子っ!」
「…あっ、思い出したっ」
「分かる?そいつが結芽ちゃんとお近づきになりたいんだって!」
「あたしと?」
急な話で驚くあたしに、拓が突っ込む。
「もしかして磯田?こいつに!?」
「お前は関係ねぇだろ。結芽ちゃん、いかが?」
「いかがって言われても…」
「最初はメールからでいいからさ」
「う~ん…」
「桂太っ、こいつアホだぞ?」
「だから、お前はひっこんでろって」
拓にバカにされ、ムカついたあたしは
「分かった!メールだけならいいよ」
バックから携帯を取り出し、桂太君にアドレスを教えた。
「おい、お前マジ?」
拓があたしに言う。
「あたしだって、そろそろ彼氏欲しいもんっ!」
そしてその夜、早速磯田君からメールが来た。
最初はそれなりに楽しかったあたし。
でも、いつまでたっても終わりが見えない。
結局、長い時間に及ぶメールのやり取りの末、あたしは桂太君にアドレスを教えてしまった事を物凄く後悔する事となった。
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