第二十時限目
食後のアイスティーを口に含み、あたしは窓から見える人達を観察。
「何かみんなうちの高校のカップルばっか…ぬぉっ!あのカップル顔近付け過ぎっ!」
「………」
「あれ?菜緒聞いてる?」
あたしはいつもと様子が違う菜緒のほっぺをツンツンとつつく。
「あのさ、結芽」
「何…どうしたの?顔怖いよ?」
「あたしね、桂太君と付き合う事にしたの」
「えっ、もうそんな仲にまで進展してたの?」
「まだ全然清い交際だよっ」
「そっかぁ…おめでとう」
そこで、あたしはふとある事を思い出した。
『あいつ彼女いるぞ?』
あたしが拓に桂太君のアドレスを聞いた際に言った言葉。
「やっぱりちょっと待って」
「ん?」
「桂太君、もしかしたら彼女いるかも…」
「知ってるよ?」
平然とした態度で話す菜緒に、あたしは少し腹が立った。
「は?なら何で付き合うの?二股だよ!?」
「桂太君ちゃんと彼女と別れるって言ってくれたし、あたし桂太君の側にもっといたい」
「でも…」
「大丈夫っ!あたし必ず桂太君の本命になるからっ」
(本命…ねぇ)
「菜緒がそこまで言うならあたしは何も言わないけど…」
「結芽もさ、早く彼氏作ってラブラブしなよねっ」
「オホホ…そのうちね(笑)」
(拓の奴…桂太君は一途だなんて言ってたくせに…あの嘘つきがっ)
それからとゆうもの、菜緒はバイトや桂太君とのデートで休み時間や放課後もあたしといる事が減り、またあたしも他の友達と一緒に行動する事が多くなっていった。
あたしの方も、部活やバイトで次第に顔を出せなくなり、拓や敦子先輩ともあんまり会う機会が無いまま毎日が過ぎて行った。
そして冬休み間近。
桂太君と付き合う様になってから、何故か菜緒はあまり学校に来なくなっていた。
《今日も来ないの?もう冬休み入るんだから明日の終業式位は顔出しなよ?》
《なんかバイトやら何やらで学校面倒臭くて…行けたら行くね》
(前は遅刻すらしなかったのに…)
菜緒に多少の心配をしながらも、今日バイトが休みだったあたしは、久しぶりに部活に顔を出す事にした。
放課後。
下駄箱でばったり敦子先輩や綾香先輩と会い、3人で道場まで向かった。
「結芽、部活久々じゃない?」
綾香先輩が口を尖らせながら言った。
「だね。先生何か言ってた?」
「元旦稽古まで来なかったら、試合に出させないって!ね?あっちゃんっ!」
「うん、先生怒ってたよ?」
「え゛~、これからはなるべくちゃんと来るよ…」
靴を脱ぎ道場の中に入ると、拓ともう2人が既に胴着に着替え話をしていた。
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