第十八時限目

「じゃーな、気を付けて帰れよ。まぁ…鼻垂らして帰れば誰も寄って来ねぇけどな(笑)」



「うるさいっ、さっさと行けっ!」




「お~怖っ」




「また明日ね」




「おう…あ、おいっ」




帰ろうとすると、拓があたしを呼び止めた。



「何?」




「早く忘れろよ」




「は?」




「じゃあな!」




拓が小走りでホームへと消えて行く。




(何…?やっぱり拓って変だ…)





その後、家に帰ったあたしは敦子先輩に電話をした。




「はい」




「結芽だよっ」




「うん。どうしたの?」




「今日拓に聞いたよ!」




「本当っ!?で、収穫は?」




「好きな子はいないみたいっ!」




「うんうん、それで?」




「あっちゃんが彼氏と別れた事は言っといた」



「拓、何て言ってた?」




「ビックリしてたよ~」





嘘。




本当は、あんまり興味を示していない感じだった。



でも、始まったばかりの恋をしている敦子先輩にそんな事を言える訳も無く、あたしは少しだけ良い様に伝えてしまった。




「そっか。ありがとね!彼氏とはちゃんと別れたから!明日から頑張りますっ」




「うん、頑張れ~!」




敦子先輩と電話を切り、あたしはソファーに横になる。




(拓のお陰で、案外尚太の事落ち込まずにいられるかも…。もう尚太の事は忘れよう…)




「ふん…いい女になってやるっ!」





あたしは早速今日の尚太の出来事を菜緒にメールし、いつもよりも早めに就寝した。






気が付けばもうすぐテスト。




成績が悪い部員ばかりが揃っている剣道部は、早めにテスト休みへと入った。



今日から部活はテスト休み。




あたしは真っ直ぐ家に帰り、アルバイトの求人情報誌を見ていた。



「家から近くて時給が良くて~高校生も雇ってくれる所…」




一枚一枚、ゆっくりと探していく。




「…あっ、あった!」



12月に新規開店するカレーの専門店。




ここなら自転車で10分程度の所だし、割と時給もいい。




「12月って…もうすぐだよね?とりあえず電話してみよ」




すぐに電話をしてみると、早速明日の土曜日午後2時から面接をして貰える事になった。




電話を切り、あたしは鏡の前に立つ。




「さすがにこの髪色はダメだよね…。この際真っ黒にしてみるかっ」




携帯と財布を持ち、近所のドラッグストアで毛染めを購入したあたしは、久しぶりに日本人らしい黒髪へと変身を遂げた。





そして次の日…




何故かあたしの髪をみて菜緒は大爆笑。



「何その頭!!違和感ありすぎっ(笑)」




「…変?今日バイトの面接あるからさ…」




菜緒以外の友達もあたしを見てはクスクス笑っている。




「そ、そんなにおかしい…?あたし的にはまずまずなんだけど…」



「ぶっ…(笑)ヅラだよヅラっ!」




(失礼な…もう少しすれば見馴れてくるよっ)




みんなに笑い者にされ、ちょっと腹が立ったあたしは1時間目の授業が始まる前にジュースを買う為売店へと向かった。




沢山の生徒がいる売店の前で、何のジュースを買おうか迷っていると、桂太君と拓の姿があった。




「うわっ…お前何?その頭!」




「…辞めて。もう散々言われて来たから…」



「だってお前…(笑)黒髪の域越えて黒光りしてるぞ(笑)」




「いいのっ!髪洗えば落ち着くからっ」




さすがに落ち込むあたしに、桂太君がフォローを入れてくれる。




「新しい結芽ちゃんだねっ!」




「ついに脱皮したか(笑)」




「桂太君いい人~!桂太君バイバイ!」




拓の存在を無視してジュースを買い、あたしは急ぎ足で教室へ戻った。





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