第十六時限目

「ねぇねぇ」




「何だよ?」




「ちょっと公園行かない?」




「はぁ!?」




帰り道。




あたしの予定では、ゆっくり歩きながら話をするつもりだった。



自転車だと駅まではあっという間。




しかも、ある程度大きな声で喋らないとお互い聞こえないときた。



「ねっ、行こ!」




あたしはゆっくり話をする為に、丁度学校と駅の中間にある小さな公園に拓を誘った。




「すぐに帰らなきゃならない用事でもあるの?」




「別にねぇけど…」




「ちょっとだけっ、ね?」




「…じゃコーラおごれ」




「ぐっ……わ、分かったよっ」





若干拓の言い方に不満を感じながら、あたしは近くのコンビニでカルピスとコーラを買い、少し坂の上にある公園へと向かった。





公園に着き、自転車を停めて少しさびれたブランコに座る。




「んで?話とは?」



「拓は今好きな子いたりするの?」




「色恋話かよ…」



「いいから!いるの!?いないの!?」




拓がブランコをこぎながら言う。




「いない」




「本当に?」




「まぁ、いても教えないけどね」




「教えてくれたっていいじゃん、減るもんじゃないし…」




「急に何だよ?」




「別に。あ、そうそう知ってた?あっちゃん彼氏と別れたらしいよ?」




「へー」




「興味ない?」




「別に」




淡々と答える拓に、あたしは次々と質問を投げる。




「彼女とか欲しくないの?欲しいよね?あんたエロ真っ盛りだしね?」




「俺変態かよっ!女なんて要らねぇっ」




「…拓意外と人気あるのに…勿体無い」




その時、拓が何やら鞄から取り出し始めた。



「え゛、拓タバコ吸うの!?」




「普通だろ」




「制服なんだから辞めなよ」




「私服ならいいのかよ(笑)」




「だって、あたしに止める権利無いし…」




「…お前はどうなんだよ」




「吸わない」



「アホっ、好きな奴いんのかって!!」




逆に質問を投げられあたしはビックリ。




「あ、あたし?う~ん…好きな人はいないけど忘れらんない人はいるかな…」




「忘れらんねぇなら好きだろそれは。元彼か?」




「まぁね」




「ふぅーん…」





その後少しの間沈黙が続き、拓がタバコの煙を真上に吹き上げた。



あたしは、そんな現場を帰宅途中の生徒や先生に見られてしまうのではないかと内心ハラハラしながらも拓を見ていた。




(今何時だろ…)




携帯を見るともう7時を過ぎている。




「お腹も空いたしそろそろ帰ろっか!」




「はいはい…」




公園から駅までの帰り道。




次はあたしが拓を自転車の後ろに乗せると言ってはみたものの、さすがに菜緒の時の様には走れず、結局また拓がこいでくれた。




駅に着くと、丁度拓が乗る電車が到着していた。




「あの電車でしょ?」


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