第十五時限目
部活が終了し、帰宅する時。
敦子先輩の恋を成就させる為、あたしは行動に出た。
「拓っ、駅まで一緒に帰ろ!」
「はぁ?何いきなり」
「たまにはいいじゃん?」
「別にいいけど…何か企んでね?」
「ないないっ!ホラ、早く帰ろっ!」
「お、おぉ…待ってろ、今準備するから」
道場の外で待っていると、急いだ様子の拓が小走りでやってきた。
「さて、帰りますか!」
「へいへい…」
まだ終わってない部活等でざわつく校内。
そんな中、拓はあたしの少し後ろを歩いた。
(あっちゃん…今頃彼氏と別れ話してんのかな…)
敦子先輩の彼はサッカー部。
1度しか話た事が無かったけど、笑うとえくぼが出る可愛い感じの人で、敦子先輩が好きって感じがなんとなく伝わってきた覚えがある。
(拓なんかより絶対今の彼氏の方がいいのに…まぁ仕方ないけどさ…)
一点を見つめながら歩くあたしが不気味だったのだろう。
拓があたしの前に回り、思い切りデコピンをしてきた。
「いだっ…」
「お前…人誘っときながら幽体離脱してんなっ!」
「今戻って来たっ!」
あたしと拓のいつものケンカが始まる。
お互い言いたい放題罵り合い、一息つこうとした時、拓が何かを思いだして声を上げた。
「あれっ?お前チャリじゃなかったっけ?」
「おっ…すっかり忘れてた」
気付いた時場所は、既に学校から随分離れた所。
「戻るか?」
「あ゛ー…、面倒くさいからいい。明日歩いて登校するよ」
「お前ん家そんなに近いの?」
「歩きだと40分位かな」
「アホっ、遠いじゃん!ホラっ、鍵っ!」
「へ?」
「へ?じゃねぇよ。チャリ取ってきてやるから鍵よこせっての!」
「え!?いいよっ!大丈夫っ」
「お前可愛くないねぇ、俺がこんなに優しくすんのなんて多分これっきりだよ?」
そう言い、拓はあたしのブレザーのポケットに勝手に手を突っ込み、鍵を取り出して自転車置き場へと走って行った。
そして数分後…
拓があたしの自転車に乗りながら戻ってきた。
「お前足短いな。俺にはこぎづらい」
「だったら乗るな」
「あれ?ありがとうは?」
「…あ、ありがとっ」
「ぶっ(笑)駅まで俺がこいでやるよ、後ろ乗れ!」
「え~、そんな恋人みたいなことしたくない…」
「誰かさんが短足だから、歩いて帰ると時間かかんだよっ!グダグダ言わずにさっさと乗れっ!」
「はい…」
あたしは拓がこぐ自転車の後ろに乗り、いつもの道を帰る。
(あっちゃん見たらヤキモチ焼くだろうな…)
そこであたしはふと肝心な本題を思い出し、拓に聞き込み捜査を開始する事にした。
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