第十四時限目

そして放課後。




あたしは昨日と同じく道場へと向かった。




中へ入ると、敦子先輩が1人で雑誌を眺めていた。




「あれ?綾ちゃんは?」




「綾ちゃん今日学校来てないの」




「風邪?」




「生理だって。メール入った」




「あららら…」




あたしは部室で胴着に着替え、パイプ椅子に腰を下ろす。




「結芽、昨日の帰りの話の続きなんだけど…」




「え?あ、はいはい」



「まず初めに1つ聞いていい?」




「いーよ、何?」




「拓と結芽って付き合ってんの?」




あたしは聞き飽きた様に溜め息をつく。




「またですか…」




「え?またって?」




「付き合う云々の前に、好きじゃないから」




「だって凄く仲良くない?」




「一応あれはケンカしてるんですが…」




「多分部員みんながあんた達は付き合ってるって思ってるよ?」




「後で誤解解いときます」



なんだ…そっか、違うんだ…」




何処となく安心した様子の先輩に、あたしは微かな疑問を抱く。




「で?本題は?」




「結芽、口堅い?」




「人による」




「何それ(笑)」




「あっちゃんは大丈夫だよ(笑)」




「綾ちゃんにもまだ内緒だからね?」




「へい」




「実はさ…」




「うんうん」




「好きになっちゃったんだよね」




「へー、誰を?」




「拓を」




「誰が?」




「あたしが」




「え゛ぇっ!!」




予想外の話に、あたしは道場内にも響き渡る程の凄まじい声を上げてしまった。




「ちょっ…結芽声デカすぎっ!」




「ご、ごめんっ、だって…」




「変?」




「え、拓!?何で?それよりも先輩彼氏いるじゃん!」




「別れるつもり。あいつとは最近ケンカばっかだったし」




「そっか…」



「拓って口悪いけどカッコイイし面白いし、何だかんだ言っても優しいじゃん?」




確かに拓は結構女子から人気があるらしい。背が高くてキリっとした顔をしている。




「アレが優しいの?その優しさには裏がある気がするけど…」




「でも一筋縄では落とせなさそうな所がまたいいんじゃない?」




「はぁ…」




「じゃあ結芽は拓の事好きじゃないのね?




「はい。神に誓います」




「よしっ!じゃああたしの事応援してよっ」




「お、応援?…いいけど…何すればいいの?」




「拓のありとあらゆる情報を全てあたしに回すべしっ!それからあたしの事さりげなくどう思ってるのか聞いてみて?」




「う゛~…わ、分かった…了解」




その後、拓やその他の部員、顧問が揃い稽古が始まった。




あたしは1人、拓と敦子先輩が恋人になった像を妄想して勝手にはしゃいでは喜んでいた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る