第十三時限目
くだらない話で盛り上がっていると、桂太君とバスケが上手なもう1人の男子が混ざって来た。
「拓ちゃんの彼女じゃん」
「桂太っ、だから違うって」
(桂太君も何気にしつこいな…)
「もしかして菜緒ちゃん?本当に来てたんだ?昨日はメールありがとう」
「ううん!あたしも結芽も暇だったから」
(あれれ、声が若干高くないかい?)
「菜緒ちゃんの事はさ、俺と同じ髪色だしピアスも同じだから顔は知ってたんだよね」
「そうなの!?」
「うん」
本当、こうして並ばれると桂太君と菜緒は赤の他人には見えない。
まるで双子みたいだ。
「また今日もメールしていい?」
「い~よっ」
「何か…仲良しだなお前等」
拓がニヤニヤしながら桂太君に言う。
「バ~カ!お前等には負けるぜ」
続けて菜緒も言う。
「確かに!結芽と拓って仲良いもんね?」
「辞めてよっ!こんなエロガッパと!」
「お前…俺あの本まだ捨ててねーぞ…?」
ケンカ勃発かと思いきや丁度よく予鈴が鳴り、残念な事にあたしと拓のなじり合いは放課後へとお預けになった。
そして5時間目。
腹も満たされた中でのあたしが大嫌いな地理の授業。
しかも、先生はいかにもイジって下さいと言わんばかりの人。
髪はカールでほぼ光があり、前頭部に少しだけある程度。しかも背が低くすぐに笑いながら怒鳴る先生だった。
クラスの男子は、この授業の時になるといつも先生の昨夜の晩御飯の内容を聞いたり早口の真似をしてからかった。
(先生もさ…半分楽しんでるよね絶対…)
あたしはとゆうと、そんな会話のやり取りを笑いながらも、窓の外の殺風景な景色を眺めていた。
(早く授業終んないかな…)
ボーっとしていると、後ろの席の子があたしの背中をつついた。
「ん?」
「手紙っ、菜緒からっ」
「あ、ありがと」
綺麗にたたんであるルーズリーフをゆっくり開いてみると、そこには菜緒らしいクセのある文字が並んであった。
【カラオケいつ行く?実は、あたしバイト始めたんだよね、地元のスーパーのレジ打ちなんだけどさ。暇な時おいでよ!それから今日体育館で桂太君と一緒に来た男の子、あれ誰だろうね?】
(男の子…いたっけかな…)
【カラオケ来週なら行けるよ!それからバイト始めたの?あたしもしようかな…それと男の子?ごめんっ、あたしも分かんない(笑)】
新しく書き直したルーズリーフの手紙を飛行機に折り、窓側の1番前の席にいる菜緒に先生が黒板を向いた瞬間を狙って飛ばした。
「あ」
下手くそな紙飛行機は案の定菜緒まで届かずに、結局ゴミを捨てるふりをして直接届けた。
そして地理の授業が終わり、次は音楽の授業。
リコーダーを持ち、うちのクラスは音楽室へと移動した。
唯一、あたしが真面目に取り組める音楽の授業。
この授業だけは、本当にあっという間に時間が過ぎてしまう程大好きだった。
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