第七時限目
あたしは全身が映る鏡の前に立ち、身だしなみをチェックした後やっとの事で1階へと降りた。
「おはよ…」
「ほら、お弁当!」
「ありがと。毎日いいのに…学校で適当に買うから」
「別にいいじゃない。お母さんだって仕事にお弁当持って行くんだから。1つも2つも変わりないわ」
あたしには父親がいない。
あたしが1歳になる前、父親の果てしない浮気が原因で離婚したらしい。
それから、あたし達は死んだばあちゃんが残してくれたお金で新しい家を建て、あたしとお母さん、そしてじいちゃんと狂暴犬の3人と1匹で暮らしていた。
「じゃ、行ってきます!」
「結芽ご飯は?」
「遅刻ギリギリだからいらないっ!缶コーヒーだけ貰ってくねっ!」
高校までは自転車で約20分。
しかも、途中で遮断機に捕まってしまうと完璧アウトだ。
「おえっ、コーヒー苦っ……って周りもう誰もいないじゃんっ、急がなきゃ!」
あたしは自転車にまたがり、半ば立ちこぎをしながらも遅刻ギリギリでなんとか教室に入る事が出来た。
「うへ~…間に合った…」
自分の席に着き、机に顔を伏せるといつもの聞き馴れた声が聞こえてくる。
「この寒い日に汗だくも珍しいよ?(笑)」
「菜緒ちゃ~ん。おはよ~」
「夜更かしのし過ぎじゃないの?」
「昨日はテレビ見ながらいつの間にか寝てた…」
菜緒があたしの顔見ながら苦笑する。
「髪ボッサボサ!」
「え?ちゃんとセットしてきたよ!?」
菜緒から鏡を受け取り見てみると、風になびかれたままの形になっている。
「ハハハ…こりゃ酷いわ(笑)」
「朝からそんなんでどうすんの…」
あたしは鞄から櫛とゴムを取り出し、適当に髪を結び1つにまとめた。
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