第18話 トリエスティの葛藤①

トリエスティ Side


これは数日前に遡る…


「……………どうする!?」


目の前のウィンドの数字を見ている。

なんと情けない。


俺はコロシアムのバトルでそれなりに勝利を獲得している。

自分でいうのもおかしいだろうが

それなりに人気も出ている。


――――だが!!


「結果が出なければ意味がない…」


トリエスティとしてこのゲームで個人の配信を行っている。

だが、どうしても今伸び悩んでいた。



バトルには勝っている。

だが、登録者数が、再生数が中々伸びない。

盛り上がる試合が出来たとしても

再生数は3桁いけばいい方だ。

登録者数も中々4桁に入らない。


「どうすればいい……」

正直言って自分のビジュアルは普通だ。

それでも俺のプレイヤースキルは高いため、

多くのバトルで勝利をしてきた。

それでも…

いや、それだけではだめなのだ。


「やはりビジュアルの問題なのか?」

くそ顔だけで売れているような奴らをみると虫唾が走る。


生放送や動画に対するコメントも

それほど多くない。

これなら罵倒でもなんでも貰ったほうがまだましだ。


「どうすればいい…」


何度目だ…

もう無意識に同じ事を言っている。



やるしかない。



以前より考えていた企画がある。

いや、企画なんて呼べるものじゃない。

これは卑怯者のやることだ。

だが、それで再生数が稼げるなら…

少しでも登録者が増えるなら…


そういった悪魔の誘惑に

俺は勝てなかった。



――――コラボ案

それもただのコラボじゃない。

炎上を前提とした他の実況者とのコラボをする。


相手は決めていた。

77所属アーシェスだ。

奴は顔もよく、それでいてプレイヤースキルも俺が納得できるものだった。

ただのイケメン野郎は嫌いだ。

だが、努力している奴は嫌いじゃない。


あいつの放送はよく見ている。

バトルを盛り上げるという事を一新に考え、

自分のビジュアルだけを全面に押しているようなやつとは違い、

しっかりと自分の戦いを演出している。


こいつなら………


もうなりふり構っていられない。

このまま伸び悩んでいれば他の奴にどんどん埋もれていく。

何かをしなければならないのだ。

例えそれが…………



自分が悪役になるものだとしても…………



腹は決まった。

アーシェスにDMを送る。


文章は出来た。

何度も読み返した。

これを送信したらもう後には引けない。


「ふぅ―――――っ」


深い深呼吸をし俺はメッセージを送った。





『件名:コラボ対戦企画のご相談』


『アーシェス様

 いつも動画を拝見しております。

 私はトリエスティという名前で個人で配信活動しております

 鳥生亮介と申します。

 アナザースフィアのプレイヤーになります。

 いきなりこのようなメッセージをお送りし、大変申し訳ございません。

 可能であればアナザースフィアのバトルにてコラボ対戦を出来ればと思い、

 ご連絡をさせていただきました。

 もちろん、大手事務所に所属されております

 アーシェス様と普通にコラボする事が難しいという事は承知しております。

 そのため、以下のような企画を考えさせて頂きました。


 まず、私の生放送の枠にてアーシェス様に喧嘩を売らせて頂きます。

 もし可能であればその際、通話などでやり取りをさせて

 頂ければより盛り上がるかと思います。

 その際、私はアーシェス様に対し失礼な形で煽らせて頂き、

 それに対し怒りを感じたアーシェス様と私との対立という形を作れればと

 考えております。

 対立の形としては私が悪役となり、アーシェス様がそれに対し制裁をするという

 役割を作れればと考えております。

 その後、何度かやり取りをさせて頂きました後に平原フィールドなどで

 バトルを行い、アーシェス様が私に勝利するという形で終了。

 といった流れの企画を考えております。

 八百長とみられる可能性もありますが、

 私のキャラクタースキルでは平原フィールドでは万が一にでも

 アーシェス様に勝つことはできないと考えておりますため、

 観戦するプレイヤーも私が無様に負ける姿に溜飲が下がるかと思います。


 この企画のメリットについては以下の通りで考えております。

 1、アーシェス様には完全な悪役として喧嘩を売った私に勝つことによって

   勧善懲悪のような形の演出を作れるのではないかと思います。

 2、こちらは私のメリットですが、人気配信者であるアーシェス様と

   コラボする事によって私の認知度が今より上がるという事です。


 双方にメリットがあると考えております企画ではありますが、

 如何でしょうか。

 当然、コラボに当たり所属されております事務所様には金銭を

 お支払いさせていただく所存です。

 誠に恐れ入りますが、

 ご検討頂けませんでしょうか。

 何卒、よろしくお願いいたします。


 鳥生亮介』




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