第17話 アーシェスVSトリエスティ③

トリエスティ Side


(いつまでも呆けている場合じゃない!)

相手が格上なのは分かっていた事だ。

この程度で動揺するな。


アーシェスが隣のビルへ移動している。

すぐに俺も移動を開始した。

ただ窓から狙撃しても躱される。


俺は壁に向かって狙撃する。

反射する矢リフレクションアロウ


これは反射した際オートエイムがあり狙いやすいが、

威力が少し下がる。

しかし、最初に使った[段々と加速する射撃グラデュリアクセラレータ・シューティング]によって下がる威力が補足される。



ギィィィイン!!


窓越しからアーシェスが切り裂く際の火花を撒き散らせ

その白銀の剣で矢を弾いているのが見えた。

(これも防ぐか)



どうする、さらに強いスキルであの部屋事攻撃するべきか……?


――ゴォォォォォン


あの部屋の壁が爆発した。

[反射する矢リフレクションアロウ]に釣らてその方向に攻撃したのか?

なら今のうちにスキルを使って追撃を――!!


いや、違う!


爆発とは反対の窓から一つの影が飛び出す。

今のは囮だ。安全にあのビルから脱出するための――――!


反射する矢は屋内では無類の強さを発揮する。

なぜならたった一度反射させるだけのスキルではないからだ。

標的に当たるまで、矢に込められた魔力が尽きるまで反射する

そういう攻撃スキルだ。

アーシェスにはすべて初撃で落とされてしまったが、

本来は一撃目の矢を回避した後に続けざまに射る事によって

回避をより困難にし、うまくいけば一方的に攻撃することができるスキルだ。

(俺の魔力だったら最低でも5回反射させられた…!)


チャンスを逃した。

だが、それは狩るチャンスを逃しただけだ。

慌てる必要はない。


すでに段々と加速する射撃は初撃の1.5倍まで早くなっている。

このまま、ダメージを与える…!



しかし、続けざまの俺の攻撃はすべて斬り落とされた。

直接狙った攻撃も、壁を利用し反射させた攻撃も

全部、全部、全部!!!

確かに壁に反射させると速度は落ちる……

それでも常人が目で捉える速度じゃないはずだ。


今アーシェスが使っているスキル。

身体を光の炎が纏う能力向上系バフスキル。

すでにアーシェスの手によってゲーム内で販売され

剣士系ジョブではよく使われるスキルだ。


(――――舐めやがって!)

だからそのスキルは既に研究している。

効果時間も! リキャストタイムも!!!

最近新しいエフェクトが付与されたらしいが、

それは見た目だけの話だ。


身体能力が向上したアーシェスはたやすくビルの壁を登り屋上へ上がった。

迷いなくこちらへきている………

――位置がばれた。

だが、それはある程度予想はしていた。

それにプラン通り進んでいる。

俺とアーシェスの距離は400m近くある。


俺はインベトリから特製の矢を取り出した。

高い出費だがこれもあの男に、アーシェスに勝つためだ。



鏃に赤い模様が走った特製の矢。

これはベルヴォルドというプレイヤーが開発した武器。

外側の能力アウターアビリティ

通常20しかないスキル領域をこの武器を使用する事で拡張することができる。

欠点はこれに付与されたスキルを使用すると武器が破壊されるという事。

この破壊とは当然、バトル中のみではない、完全にデリートされる。

言わば使い捨ての武器だ。

あの変態鍛冶師はこのスキルを様々な武器に付与して法外な値段で販売している。

俺はそれを何本か購入している。

1回のバトルで使用出来る武器は1個のみだが、その分これは強力だ。

拡張出来るスキル領域は種類のよって様々だが、

この矢は3まで可能だ。


この矢にダメージ向上、速度向上のスキルを付与している。

これを使って俺の切り札を使う。



弓を構える。

それはこちらに迫りくるアーシェスに向かってではない。

天に。



弓を引く。

――限界まで。

矢に赤い光が集まる。

光が膨張し徐々に膨らんできた。

「ミーティアライン」


集った赤い光は矢を纏い天へ射出された。

螺旋の光を放出しながら唸りを上げて空へ進む。

そして一条の光となった。


それはまるで太陽が地上へ落ちてきたかのような光。

光が破裂し、いくつもの流星へと変わる。

追加付与したスキルによりさらに威力が上がった流星は

今こちらへ迫らんとしているアーシェス目掛けて墜ちていく。


「無駄だ。お前の切り札でも今からでは発動できまい」


勝ちを確信した。

遮蔽物に隠れるという手段もあっただろうが、

幸い奴は建物の上からこちらに向かっている。

よけられない。


奴へ流星が落ちその爆風が俺を襲った。

あまりに強い風圧に目を閉じそうになる。



その瞬間だ。



俺が放った流星とは違う。


一つの紅い閃光が俺に襲い掛かった。




偶然だ。

爆風で態勢を崩していた。

風圧に耐えられず少し右側に身体を崩してた。


だから助かったのだろう。

運がよかったのだ。


だから何が起きたのかわからない。

でも俺はそれを見ていた。


飛び散る血飛沫に交じり

なぜ俺の左腕が宙を舞っているのか。


なぜ、



流星で仕留めたはずのアーシェスが、



右目から紅い光を放ち俺の左側で剣を振りぬいていたのか。



何もわからなかった。




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