第16話 アーシェスVSトリエスティ②

 先ほど矢が射られた窓からすぐ近くの壁を見る。

(僅かに傷がついている。ただの壁のダメージテクスチャではない)

そこから予想される先ほどの攻撃。


――――矢を壁で反射させたのか。



反射系の攻撃スキル

扱いが難しいスキルではあるが、

使いこなせば確かに強力なスキルだ。

どっちにしろ、このままここにいたら袋のネズミだろう。


アーシェスは先ほど攻撃された窓に向かってスキルを発動した。

「――斬光剣!」



剣より光が迸り振るった斬撃が窓と壁を破壊した。

アーシェスが持っている低コストの遠距離攻撃スキルだ。

そしてすぐに反転し反対の窓から飛び降りた。

あの爆発に注目している間に移動するためである。

(あれに多少でも釣られてくれれば……)


地面に着地しそのまま走り出した。

この少々広い広場へ向かう。


左手方向より気配を感じ剣を振るった。


ギィィィイン!


(――――っ!!これは!?)

タイミングが僅かにずれた。

斬り損ね顔に付けている仮面に僅かに矢が掠った。

先ほど感じていた疑問が分かった。


(最初より矢が早く、重くなっている!)


ギィィィイン!

続いた来た3本の矢を切り伏せる。

先ほどより早い矢を斬り確信した。


これは徐々に矢が加速している……!

そういうスキルか!


恐らく、使用するたびに加速する射撃だ。

これは長期戦になれば厄介になる。

やはりあれを使うしか……



「聖なるオーラⅢ!」


身体に光の炎が纏われる。

先ほどの射撃である程度方角は把握できた。

問題はあれも反射させて矢だったのか、という事だ。


バフを掛けた身体に力を入れる。

つぎは右、いやこれは……


ビルの壁を利用し反射された矢が複数個所より

迫ってくる。


「斬光剣!」

剣に光をまとい、自分を中心に周りを一掃する。

周りに多くの土煙が舞う中、

アーシェスは近くのビルの屋上へ飛んだ。


(今ので分かった。

 反射すると多少でも矢の威力が弱っているようだ)


もう居場所は大よそわかった。

先ほどの矢で一番攻撃力が高かったのは3回目の攻撃だ。

4回目の攻撃は少しだけ弱かった。

またビルの屋上に着地し、そのまま走った。



居た。



隠れるのを止めたようだ。


(っく!)


空に星が輝く。

快晴の空にまるで満天の星が輝いているように見える。

「―――――ミーティアライン」



まだ遥か遠くにるトリエスティからスキルの詠唱が聞こえる。

あれは斬光剣でも捌けない。

今から[ヴァーティカルレイド]を使う?

いや、あれはタメがいる。

今からでは……

空の瞬く星はアーシェスに向かって墜ちていく。


轟音がなり

多大な爆発とそれによって生じた衝撃波が発生し、

周囲のビルの窓ガラスがすべて割れた。








トリエスティ Side



バトルが始まってすぐ俺は屋上に上がり索敵スキルを使用した。

「サーモグラフ!」


これは熱を持つ物体を見つけるスキル。

こういった遮蔽物が多い場所でも

火属性に特化している俺ならこのスキルで敵を見つける事ができる。


すぐに屋上に上がる奴を見るける事ができた。

段々と加速する射撃グラデュリアクセラレータ・シューティング


これは俺がサブ垢で作ったスキル。

このバトル中に矢の速度が上がり攻撃力が上がっていく

バフスキルだ。

スキル領域を5使うが、一度使えばこのバトル中は恩恵を得られる。



アーシェスが屋上に着地する瞬間を狙い、狙撃した。




奴はそれを難なく斬り落とし防いだ。

(くそ!斬っただと!?)


今までの対戦で心眼スキルを使い、

俺の攻撃を防いだやつはもちろんたくさんいる。

今のランク上位者と戦った時も

剣で防いだ奴だっていた。


だが、斬り落とした奴はいなかった!!



いくら初撃でまだ大したバフを付けていないが、

それでも200km以上は出てるんだぞ。


例えるなら、バッティングセンターで

バットを持ち正面に立って迫りくるボールを打つようなもんだ。


出来るか?

バントのように迫る玉にバットを当てるならともかく、

振りかぶって打つんだぞ。

しかも、矢はボールなんかよりもさらに小さいんだ。


いくら矢の来る方向が分かってもそんな芸当ができるはずが!!



――――化け物が!










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