第13話 トリエスティ

『さぁ!!!本日のメインイベント!!

 アーシェス選手対トリエスティ選手の対戦だぁ!!!』



今回転送されたフィールドは

廃都タイプのフィールドだ。

このMAPの特徴は廃墟となった高層ビルが多く配置されている。

そのため、隠れる場所が多いため

このフィールドでのバトルは観戦用のカメラが多く飛んでいた。



『さぁ!!

 接近戦に定評のあるアーシェス選手が上手く

 相手を追いつめられるか!

 それとも、遠距離戦闘を得意としている

 トリエスティ選手が近付くことも許さず

 敵をハチの巣にするのか!

 注目の一戦になります!!』




普段勝敗を二の次として

いかにバトルが盛り上がるかを考える

今回はアーシェスにとって珍しく決して負けられない戦いだ。

(遮蔽物が多い。僕にとっては不利な戦いになるな)


フィールドに転送されアーシェスは周りを確認し、

それを強く確信した。


(今回ランダム転送のため、どこに敵がいるかわからない。

 先に相手を見つけたほうが有利となる……がだ)


アーシェスは観客から届けられる応援に

いつものように笑顔で手を挙げて答えているが、

その目は油断なく目の前を見ていた。


空に天球型のオブジェクトが浮遊する。

大きな文字で10カウントが始まった。



アーシェスはそのカウントを見ながら

数日前の事を思い出していた。





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春斗 side


「ああ、ありがとう。

 さっき届いたよ。

 両方とも問題なさそうだ」


僕は以前受け取ったスキルについて

大吾君にお礼の電話をしていた。


「さっきテストしてみたけど、

 両方とも素晴らしいね!

 あと例のスキルについても

 対応してくれてありがとう」


実は今回大吾より購入した

魔眼を使用する際にスキル領域が足りなくなってしまった。

20しかない領域をどう使うか。

それはどのプレイヤーも悩む問題であり

このスキル構成こそバトル前の醍醐味ともなる。


『いや、前の方がそもそも問題だったんですよ。

 もっと早く修正するべきだったんですが、

 どうも違うスキルを作るのに夢中になってしまって…』


申し訳なさそうにしている大吾に対し

僕は笑いそうになるのを堪えていた。


「いやいや、あんなとんでもないスキルを作ってくれたんだ、

 それに対し文句をいうのは罰当たりもいいところだよ」


以前僕のスキル領域を圧迫していたスキル

【通常攻撃シリーズ】

これはなんの効果もない。

ただ剣を振るうだけのスキルだ。

違うのは剣を振るった際に剣の軌跡を出すエフェクトがあるという事。

これは見た目が非常によく、配信の際でも

受けが非常にいい。

ただ問題もあった。

それはこれだけでスキル領域を6も使っていた事だ。

理由は唐竹や袈裟切りなど事にスキルを作っていたため、

全部で9種類のスキルの中からバトル事によく使う攻撃を選び

6種類使用していた。

大吾君が言うには今回スキル使用時に斬撃の種類を選択する事によって

スキル領域を1に落とす事に成功したという事。


『その代わり使い勝手がかなり変わったから練習必要だと思いますよ』

「その辺は大丈夫だ。

 さっきNPC相手に練習してきたけど

 もう慣れたよ」


スキルを使用する際、独特の癖があったが、

何度か使ううちに慣れた。


『相変わらず凄いですね~』

「ははは、慣れだよ慣れ。

 ――――ん?

 ごめんね、ちょっと連絡が入ったみたいだ」


『了解です。

 また何かあれば言ってください』

「ああ、ありがとう」


そうして通話を切った。

さて、これはDMか?


「ふむ、バトルの申し込みか」

相手の名前はトリエスティ。

確か魔弓を使う遠距離型のプレイヤーだったか。

身長はおそらく僕よりも小柄だ。

赤褐色の短髪の髪にサングラスが特徴的なプレイヤーだと記憶している。


(この内容は……)





夜。

僕は自宅にいた。

先ほどのDMに今日の夜に

連絡をする旨も記載されていたからだ。


(――――来たか)

スマホに映る画面を見て

僕は通話を繋げた。。


『お、繋がったな!

 よお、アーシェス。DMみたよな?』



はは、随分乱暴な口調だな。


「やあ。

 一応初めましてだよね?」


『あ?なんだよ。

 俺みたいな弱小ライバーの配信は見たことないってか!?』


「いや、違うそうじゃない。

 君の事は知っているさ。

 ただこうやって話すのは初めてだろう?」


『そんな細かい事はいいだろうが。

 それよりバトルやろうぜ。

 もちろん、逃げないよな?』


「ああ、もちろん構わないよ。

 ただ、こちらにも予定があるから、

 日程は合わせてほしいのだがな」


通話しながらカレンダーのアプリを立ち上げる。


『なんだよ? そんな事いって逃げる気じゃないだろうな?

 言っておくが今配信中なんだぜ?』


確かに今配信されているようだ。

画面には僕と彼との会話を面白可笑しく見ている

コメントが多く流れている。


「そういう事は通話をつなげる前に言ってくれないか?

 こちらも事務所に所属しているんだが………」

『うるせぇな!

 気取ってんじゃねぇよ!

 対戦は明後日の金曜日時間は合わせてやるよ。

 それでどうだ?』


金曜日か。

それなら空いているし問題ないかな。

「それなら時間は21時でどうだい?」

『おし、それで決まりな!

 おい逃げんなよ?

 あとお前が負けたらてめぇのスキルを全部寄越せよ』


「君は何を言っている?

 そんな事了承するはずがないだろう?」


僕は少しイラついた声でそう返答した。

『なんだよ。ビビってんのか?

 俺が負けたら俺のスキル全部やるからよぉ

 それで対等だろうが』


「対等ではない。

 君のスキルと僕のスキルでは

 使用している武器が違うからお互い使えないだろう。

 なんの意味がある?」

『意味ならあるさ!

 お前みたいな有名プレイヤーが使ってる

 スキルを奪ってネットに晒す!

 これはバズるぜ?』


(炎上するの間違いだろうが。)

「どうやら縁がなかったようだな。

 今回は見送らせてもらおう」


『おいおい!

 やっぱり逃げるのかよ!!

 いいぜ、逃げたら晒してやる!!

 アーシェスは俺との戦いにビビって逃げたってな!!』



「好きにしろ」


そうして通話を切った。
















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