第14話 トリエスティの生放送

 昨日、トリエスティとの通話の後、

早速SNSでトリエスティによるアーシェスを叩くような

呟きがされていた。

『アーシェスは俺とのバトルから逃げた』

『あいつは、全然強くない。弱い奴とばかり戦っている』

『何か文句があるなら何時でもバトルしてやるぜ』


などと言った投稿をしており、

それに反応するファンも当然にいた。

『アー様に対し何言ってんのこいつ、マジむかつく』

『ほんとだよね、鳥の癖に何でアー様に喧嘩売ってるの?』

『でも相性悪そうだからワンチャンあるんじゃね?』


などなど


掲示版にもこの二人を話題に雑談板も盛り上がっていた。


アーシェスから何の反応もないという事により

普段はあまり来ないアンチコメントも

アーシェスに対し増えてきている。


『本当に逃げたんじゃないか』

『何ビビッてんだ、負けそうな戦いはしないか?』


そうしてネット世界で一夜で騒がれるようになり、

トリエスティは翌日の夜、もう一度配信を行った。




VR用配信ルーム。

普段ならばこのトリエスティのチャンネル配信は閑古鳥が鳴いている。

しかし今日は来場者が多く集まっていた。



「いよぉ、いいね! いつもより人がたくさん来てんじゃん。

 おぉ、今日も昨日の続きやるわ」


そうしてトリエスティの配信が始まった。

昨日人気配信者であるアーシェスに喧嘩を売ったことにより

今日はいつもより見ている視聴者が多かった。


[鳥、マジ最低だな]

[いいじゃん、アーシェスがびびったのはマジなんじゃない?]

[は?アー様が負けるわけないでしょ]

[実際ビビッて逃げてんじゃんか]


流れてくるコメントを見て

配信ルーム内にいるトリエスティのアバターの口角が上がる。

「まぁ、俺の矢の的になることは必然だからな!

 ビビるのもしょうがねぇよ。

 まぁ、逃げるのはダセェけどさ」


当然トリエスティに対するアンチコメントが多くあるなか、

このやり取りを面白ろ可笑しく見ている人も多くいた。

[で、本当にやるの? やるなら絶対行くけど]

[確かに鳥が負けるとこ見に行くわ]

[あのイケメンが負けるとこみたい!]


「どうだろうなぁ。

 でも、ぜってぇアーシェスの野郎とやってやるよ。

 そんで俺が勝ったらあいつのスキルおめぇらにばら撒いて

 やるから期待してろよな」


トリエスティは強気な表情で語っている。

実際彼自身の戦績は悪いものではない。

今シーズンでのランキングを掛けたバトルでは

3勝1敗という成績だった。

成績は悪くない。

ただし、この強気の正確もあり、

中々再生数や登録者数が伸びず悩んでいた。


そこで思いついたのが

今もっとも勢いがある配信者であるアーシェスとのバトルだった。


[鳥が勝てるのか?]

[ははは、期待しててやるよ]

[鳥如きが調子に乗らないで欲しいよね]

[ほんとだよね、アー様に早く謝ってよ]


「うるさいキッズだな。

 いいから見てろよ、ボコボコにしてやるからさ」


サングラスを手に持ち、指に掛け回している。

「らくしょーだって。

 ま、期待しててよ。

 ―――――――……ん?」


トリエスティが何かに反応した。

「――――っは!

 おいおい!アーシェスから連絡きたぜ!

 通話つなぐからちょっと待ってろよ」


[は?まじ!?]

[お、放送見てたのか?]

[やっぱムカついてるんだって]

[アー様!!!]


「はいはい、トリエスティです。

 いやぁ、待ってたぜぇ」

『――トリエスティ

 ここまでバカにされては流石の僕も我慢できない。

 いいよ。やろうか。

 時間は以前決めた通りの金曜日21時でどうだい?』


「はっはっは!!

 いいね! 逃げないんだな!!

 時間はそれでいい。

 ただ罰ゲームはスキル全譲渡だ!」


[まじで、鳥最低だな]

[アーシェス何のメリットもなくて草]

[こいつブッ飛ばして!アー様!!]


『それについて内容を変えたい。

 罰ゲームは【負けた方が勝った方の言う事をひとつ聞く】

 それでどうだ?』


配信ルームの中に響くアーシェスの音声。

少し呆気に取られた様子でトリエスティが口を開けていた。

「おいおい。バカなのか?

 それなら俺が勝ったらお前のスキルは全部よこせ!

 それでいいのか!?」


『構わないよ。

 それでは当日負ける覚悟をして挑んでくるといい。

 あぁ、それとひとつだけ』

「あ?なんだよ?」


『――――――本気でやろう』


「――っ!!」


[お!じゃあ、バトル決定だな!]

[やべぇ絶対みるわ]

[鳥まけるなー]


多くのコメントが流れるなか、

トリエスティは目を細めそこにはいない

アーシェスを睨んだ。


「いいんか?」

『もちろんだ』


「そうか。

 じゃあ、当日楽しみにしてろよな。

 おい、アーシェスがバトルを受けてくれた!!

 今週の金曜日にコロシアムでやる!

 お前ら絶対見に来いよな!!!」


[週末の楽しみが出来た]

[ぜってぇいく!]

[アー様! ファイト!!]



「よし、これで今日の配信は終了だ。

 お前ら、楽しみにしてろよな!!」


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