第12話 魔眼コンタクト

「うん、もう集まってるみたいだね。

 おーい! お待たせ!!」


アーシェスが手を振っている先に

二人の人物がいた。


一人は鬼種のプレイヤーだろうか。

額から特長的な角が二本生えており、

白髪のロン毛である。

その盛り上がっている筋肉もそうだが、

かなりデカい。


もう一人は獣人種だ。

あの耳から察するにおそらく狐だろうか。

こちらは女性のようで、

とてもラフな格好をしている。

ショートカットで眼鏡をしており、

知的な美人さんといった印象だ。


「おう、待ってたぜ。

 そっちが例のやつかい?」

「ふふ、こんにちわ。

 アーシェスさんお久しぶりですね」


二人にアーシェスと共に近づく。

恐らく有名な人なのだろう。

俺自身、生産職であるが交友関係がかなり狭い。

とりあえず、挨拶だ。

人間関係は最初が肝心ってね。


「初めまして、アーシェスのスキルを生産してます

 テイクといいます」


とりあえず、無難に頭を下げて挨拶した。

「がははは!思ったより硬いやつだな。

 同じ生産職同士だ。そんなに緊張するなよ。

 ワシはオルス。見ての通り鬼種で

 アーシェスの武器を作っておる」


そういって、俺の肩をたたくオルス。

止めてくれ、痛いのだが……


「私はアーシェスさんの防具を作っております

 フィーネです。

 ちょうど、オルスさんとあなたの話をしていたのよ」


「え?俺の話ですか?」


なんだ、悪口か?

もう人間関係は失敗してたのだろうか。


「アーシェスのスキルはいつも驚かされるものが多いからな。

 ワシも試しに購入してみたが、

 あれはワシには真似できそうにねぇや」


ガハハハと豪快に笑うオルス。

よかった。思ったよりいい人そうだ。


「はは、僕としてはオルスの剣にも、

 フィーネの防具にも、もちろんテイクのスキルにも

 本当に助けられているよ」


あ、スキルといえばあれを渡しておくか。

「そういや、アーシェス。

 新作出来たけどどうだ?」


「え!? 今回は随分早いね……

 ちなみにどんなスキルだい?」


「まぁ見てもらった方が早いかな」

俺はそういって、俺が装着し実験していた

映像をホログラムとして保存していたものを渡した。


「ふむ、ワシらも居ていいのか?」

「テイクが良ければ大丈夫さ。

 どうかな?」


一度仮申請しているからもうパクられる心配もない。

というか、そういう人達でもないだろう。


「ああ、大丈夫だよ」


「それはうれしいわ。

 私もスキルは全然作らないから楽しみ」


フィーネさんは本当に楽しそうにしていた。

「それじゃ、映像を再生させるか」


アーシェスは俺から受けてとったデータを再生する。

そこには暗い空間で

俺のアバターが目をつむり、

目を開く動作に合わせて簡単なポーズを取っている。


うん、こうやって見るとちょっと恥ずかしいな。


俺の動きに合わせて俺の両目が赤く光る。

それを3人は少し呆けた様子で見ていた。


「どうだ? 今回のコンセプトは魔眼でな?」


俺が解説しようとした所で

アーシェスが俺を肩を強い力で掴んだ。

おい、痛いぞ?

「テイク!!! これまたすごいスキルを作ったね!!!」

「おお、かっこいいだろ?

 一応能力はこんな感じでな」


俺は運営から来た能力リストをアーシェスに渡した。

受け取ったそれをアーシェスは食い入るように見ている。


「こりゃぁ驚いたな。

 あんなのどうやって作ったんだ!?」

「ほんとよ!!

 私もびっくりした。

 どうやって目を光らせてるの!?」


アーシェスが離れたと思ったら、

オルスとフィーネさんに質問攻めにされた。


ちなみに全部企業秘密と答えている。

同じアーシェスの装備を作っている仲間でも

流石にそのあたりは秘密だ。

商売のタネだしね。



「テイク、君には本当に驚かされる。

 これはもちろん、僕に売ってくれるんだよね?」

「おう、そのつもりで持ってきたからね」


俺は軽い感じで頷いた。

「テイク、君はわかっているかい?

 今回のこの『魔眼』スキルは僕が知る限りまだゲーム内で

 誰も開発していない。

 スキルは必ず武器か防具、アクセサリーにしか付与できない。

 そんな中で眼にスキルを付与し、発動する事ができるこれは、

 間違いなく、バトルで使えば盛り上がる!!

 質問だが、これは申請すればもうスキル化は可能なのか?」


アーシェスは随分を興奮してい様子だ。

気に入って貰えてよかった。

「ああ、もう申請すればスキル化できる。

 そのための装備がこれだ」


俺はインベトリから魔眼コンタクトを渡した。

「――――――なるほど。

 君は本当に天才だね。

 まさか、こんな物を作るなんて……」


それをオルスとフィーネも覗いていた。

「……………コンタクトだと?」

「嘘………そんなものどうやって作ったの!?」


三人とも信じられない様子だ。

「コンタクトならアクセサリー扱いになるって

 仮説があったから、古い馴染みに頼んで

 試作してもらったんだ」


「これを作ったのはだれだ?」

「テイク君、コンタクトレンズを作るって所から

 かなり難易度が高いのよ?

 普通に作ったらまず装備出来ても眼球に付着した時点で

 ダメージ判定が出てしまうの」


え?そんなに難しいのか?

まぁ、エリーならそれくらい作れるだろうが。


「スキルの効果やエフェクトもそうだが、

 それ以上にコンタクトの存在にも驚かされたよ。

 テイク、このアクセサリーを作った職人を紹介してもらえないか?」


「あぁ――――

 悪い。あいつ昔色々あってもう装備作ってないんだ。

 今回俺の思い付きに突き合わせてしまっただけでな…」


エリザベスとは長い付き合いだ。

だから知っているのだ。

大した付き合いもない人から

装備を作ってほしいという事が

現在の彼にとってどれほどの苦痛になっているのかを……


「……そうか。

 いや、無理を言ってすまない」


「悪いな、アーシェス。

 そうだ、今度のバトルのチケットを2枚くれないか?

 今度そいつを誘って観戦に行くよ」


「そうか、分かった。用意しておこう。

 気を取り直して、後でこの魔眼スキルについて

 少し相談させてくれないか?

 少しお願いしたい事があるんだ」


そのあと、オルスとフィーネさん、アーシェスを交えた4人で

少し雑談をしてその日は解散となった。

そのあと、ゲームをログアウトし、

春斗さんと魔眼スキルについて少しすり合わせを行い、

スキルの申請を行った。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る