第2話 電脳畑で捕まえて ソーファーフロム 神々の黄昏

BS5って知ってるかい?

ブレインストーミング5、最新のゲーム機さ!


今までのような据え置きゲーム機なんて古い古い。BS5は自分の脳に直接インストールするんだ。

たいていのコンビニにおいてあるブレインスポットに寄ってチョチョイとダウンロードするだけ。

それだけで視神経に作用して自分が見ている風景がそのままゲーム画面になる。

現に今、僕が見ている視界の左上には体力ゲージ、スタミナゲージ、右下には自分の装備、次のクエスト情報が表示されている。


なになに?次のクエストは3丁目に現れたモンスター討伐か。

モンスター情報はと……ふん、ダークキマイラか。中ボスクラスだな。

しかしレベル26の俺様「✝疾風迅雷のクラウド✝」の敵ではないぜ!

僕は近所で5番目にこのゲームをやりこんでいるんだっ!



永久絶対凍土(エターナルフォースブリザード)ッ!!!相手は死ぬ。

……ふぅ。ダークキマイラか。ま…まあまあ歯応えがあったな…ぼ、僕の敵ではなかったけど。

ドロップアイテムはと……「ノブ子の入れ歯」?

チッ……シケてやがんな。何に使うんだよ、こんなアイテム。

なーんて言ってる間に次のエンカウント。これトップランカーの辛いとこね。


ん?街のチンピラ?

なんだよぉー。最序盤の雑魚敵じゃないか。

……はぁ…雑魚が…もう行って良いよ。倒してもどうせろくなアイテム落とさないし……

!!……って!イタッ!

ええ?ち、ちょっと待って!痛いのに体力ゲージ減ってないんだけど!

ちょ待てよ!バグか!?これ!運営!!うんえーい!!

は?リアルなの?これ?

え?バカにしてんのかって?!ええぇー!滅相もない!ごめんなさい!

フォカヌポウ!ブルスコファー!



……ふぅ。まったく酷いめにあったな。

まさか人口の減ったこの町でリアルの輩に遭遇するとは……

お陰でリアルマネーがちょっと減っちゃった。

……でも良いの!些細なこと!だってこれから愛しのシオリたんとデートだもん!

キター!

恋愛イベントキター!(・∀・)

綺麗な夜景を眺めながらメシ喰って、俺様の小粋なトークと熱視線でシオリたんのカワイイお胸はトゥンク!ついでにジュンジュワー!

そしてその後は……デュフフフ……楽しみでござるなぁ。



あっ!シオリたーん!こっちこっちー!

うん?待った?まあそれなりに……って、いやいや、拙者、全然待ってないでござるよー!ぜんぜーん!

ニンニーン!なんつってー!

さあシオリたん。今日はどこに行きますかな?我が輩がエスコートしますぞ!


→和風居酒屋

 焼肉

 イタリアンレストラン


おう!この選択肢!三択の帝王と言われた僕チンにお任せあれっ!

うーん……イタリアンレストラン!!

どうよ!この選択肢!

イエスッ!好感度がアップ!ドヤッ!



どう?シオリたん。美味しかった?

ンーそうですかぁー。ンンーなにより。重畳重畳。

実は拙者、プレゼントがあるでござるよ。


 リング

 花束

→安産のお守り


この三択は……安産のお守りッ!ドヤッ!

早く拙者とシオリたんのベイビーちゃんの顔が見たいでござるなぁ!……デュフフフ……ついでに今から仕込んじゃう?……グヘヘヘ……ヨダレダラー

……って、えぇ……好感度ダウン?

課金したのに?……数万円は課金したよ?

……えぇ…えぇー……ここの運営マジでクソだろ……


って、まあ良いや!とりあえずホテル行こ!課金して部屋とってあるんだ!役目でしょ!!


……?クレジットカードの情報を登録しろって?

え?18禁コンテンツだからって?

えぇ……(プチー)ちょ!おま!ふざくんなよ!!クレジットカードなんて持ってるわけねぇだろ!!

こちとらニートよ!?審査通るわけねぇだろ!?

はーマジクソだわ、はーマジクソマジクソ

市ね、運営市ね、ついでにシオリとかいうクソビッチも滅びろ!みんなの肉便器がっ!

みんなのゴルフかよ!

玉が穴にホールインワンってか!?

俺の赤玉はOBだよっ!!!





そして場面は変わり、ここは遠いお空の上のどこかにある光溢るる神々の国。

綿菓子のような雲を座布団にしてミルクセーキとエナジードリンクを交互に啜りながら、口内は甘ったるくて仕方なかろうに苦々しくモニターを眺めるのは全知全能の神様。

横でフワフワと飛んでいた天使は神様に話かける。


「神様。新作の惑星シミュレーションゲームはどうですか?面白いですか?」


「うーん。最初は面白かったんだけどねぇ。小っこい猿が人間に進化してさ。狩猟を覚え農耕を始め、集落から国を作り、やがて文化が発展し……でもその後はダメ。」


「ダメと言うと?」


「うーん。なんだろなぁ。戦争ばっかしやがるのコイツら。

自分達が想像した神と偶像ばっか信仰するし。神はここにいるっつーの。」


「ハハッ、正に神視点」


「文明の進化と同時に巧妙な嘘を覚え他人を欺き、芽生えた自意識で利己的になり。

せっかくの文明の利器を人殺しの道具に使ってんだよ?

もうさ。こりゃダメだ。粛清だ。人口減らしたろっつって撒いたね。ウイルスを。俺は」


「人口減ってどうなりました?」


「うーん。変わんねぇな。本質は。

それどころか、より内面に篭もりだして。

肥大化した自意識を守りたい。他人の意見は聞きたくない。傷付きたくないっつって安全なゲームやネットの世界に依存しだして、そこから出たくねえんだろうなあ。」


「それはそれは……オンラインでもソロプレイですね。」


「バーチャルなゲームなんかよりやれよ!テメェの人生ってゲームをさぁ!

神は激怒した。

はぁ……もうメンドクセェな。このクソゲー。」


「……うーん。やっちゃいます?リセット」


「うーん……やるかぁ!


ハ……

ル……

マ……

ゲ……」



    ドーーーーーーーーン!!!!!!



地球は滅んだ。

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