02 だいたい噂は殺人事件とかになる.

「速いでしょ。荷台」


「速いですね。自転車以上かもしれない」


「ブレーキないんで、ドリフトで止まります。掴まってください」


「うわっ」


 ドリフトで急停止。


「着きました。港です。見えます?」


「はい。うっすらと」


「箱から出ちゃだめですよ。周りに一応知らない人とかはいないですけど」


 荷台をゆっくり押して、荷下ろし所へ。


「おっ。蒔南まなんちゃん。また荷運び?」


「ううん。荷の受け取り先を探してるんだけど、なんか港の周りで迷ってるらしくて。探しに来たの。荷はこれ」


「そっか。一応気を付けてね」


「何に?」


「なんか近くで、殺人事件だってよ」


「さつじん」


「犯人捕まってないから、注意してくれって、さっき警察官が」


「ええ、こわいっ。ちょっとだけ見て回ってすぐ帰ります。ありがとう卸さん」


「いえいえ」


 荷台をゆっくり転がしながら、下ろされた荷を見ていく。周りに誰もいないのを確認しながら、箱に声をかける。


「さつじん、ですか?」


「嘘ですね。殺人なんて起こってません。俺、殺人犯に仕立てあげられちゃったかな」


「大丈夫、ですか?」


「大丈夫です。追ってきてるのが管区で、私は中央の所属なので」


「ちゅうおう、と、かんく?」


「あ、分かりにくいか。僕、役所の偉いところの人間なんです」


「へえ。偉いんだ。すごい。追われてるのに?」


「追われちゃってるんですよね。偉いのに。で、追ってきてるのが偉くない人たちです」


「えらくないから追ってきてるんですか?」


「偉くなろうとしてるんですけど、そのやりかたがちょっとだめなやりかたでして」


「どんな?」


「聞きます?」


「聞くっ」


「まあ、ここまで来たら仕方ないですもんね。一応最終確認です。これ聞いちゃうと、事件解決まで私とずっと一緒にいないといけませんが、それでもよろしいですか?」


「ぜひっ」


「明るいお人柄だ」


「おかねもちにうまれたのでっ」


「そうですか。ではお話ししましょう」


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