第7話
はっと意識が戻った。まぶたを開けると眩しい光が入ってきた。周りを見ると、そこは病室のようだった。
「春樹、目を覚ましたの」
目の前には母がいた。
「春樹、大丈夫か」
高校生の時、一緒にバンドを組んでいたあいつだ。野村だ。彼はほら、と電話を俺の耳につけた。
「目が覚めたんだな。春樹。本当によかった」
バンドを最初に抜けた彼だ。沢田だ。涙声だった。
「春樹の友達はね、春樹が怪我をしてから毎日のように見舞いに来てくれてたのよ。来れないとしても、何回も電話をかけて春樹はどうだって聞いてくれてたのよ」
母は言った。涙が出そうになった。何で俺は死のうとしてたんだ。
「ありがとう。ごめんなさい」
辛くなったらいつでも話聞くからな。無理すんなよ。周りから聞こえる言葉にもう涙も抑えられなかった。
僕が一通り泣いた時、野村が気まずそうに言った。
「ギターはボロボロになっちゃったみたい」
ギターはネックが折れ、弦が明後日の方向に伸びていた。また買えば良いやと思った。お金はなかったが、大丈夫だと思った。
ふと、俺はどれくらい寝ていたんだろうと思った。母や彼らの話を聞くと一日や二日ではなさそうだ。
「そういえば俺ってどれくらい寝てたの?」
「ちょうど二週間だな。お前が病院に運ばれたのも金曜だったから」
彼女を待たせてしまっている。瞬間的にそう思った。今日は金曜日。いつも路上ライブをやっている曜日だ。病室の時計を見ると、午後五時だった。まだ間に合う。
俺は、疲れたから少し一人にさせてくれ、と言ってみんなを帰らせた。本当に申し訳なかったが、彼女を待たせたくなかった。みんなが行ってからしばらくして俺は周りに誰もいないのを確認して病室を抜けた。何故こんなにも彼女のことを気にするのか自分でもわからなかった。
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