【第一部】第一章 再会


そう言いながら、影龍の瞳の優しさに、美剣は、コホンと咳払いをする。


「私は、十三年前に、親に捨てられたんだ。うちは、ひどい貧乏で、そのくせ、子供は、五人もいた。私は、生まれつき、あまり身体が丈夫じゃなくて、そんな私を親は、疎ましく思っていたのさ。捨てられて、ピーピー泣いているところを丁度、通りかかった飛翔に助けてもらって、この伊賀に来た。」


「.........。」


美剣の話を聞いて、影龍は、眉を寄せる。


「大人ってやつは…本当、身勝手だな。身体が弱いからって、生んだのは、てめぇ達のくせして。何も、好き好んで、こんな時代に、生まれてきたくはなかったってのに…。生まれる場所が違ったら、もしかすると、お前は、姫様だったかもしれないな。」


「姫様?私がかい?」


プッと吹き出し、美剣は、笑った。

あどけない美剣の笑みを見つめ、影龍は、薄く笑みを浮かべる。


「もし俺が殿様に生まれていたら、お前を女房に迎えたのにな。」


「えっ?」


美剣は、驚き、声を上げた。

影龍は、クスクスと笑う。


「冗談だ。…お前みたいな、じゃじゃ馬、お断りだ。」

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