【第一部】第一章 再会


人の足音に、ゆっくりと目を開けると、美剣が片手に、握り飯を持って立っていた。

壁についている蝋燭に火をつけると、美剣は、影龍を見つめる。

その瞳には、優しい光と悲しげな光が宿っており、影龍は、軽く息をつく。


「腹が減っただろう?さぁ、食べな。」


握り飯を掴み、影龍の口元に差し出す。

影龍は、クスッと笑ってみせる。


「良いのか?このようなことをして。殺すのでは、なかったのか?」


美剣は、プイッと顔を背け、小さく言った。


「ゆっくり、じっくり…と、飛翔が言っただろ?忘れたのか?物覚えが悪いな。」


その言葉に、力無く笑う影龍。


「そう…だったな。」


影龍の笑みに、美剣は、ドキリとする。

差し出された握り飯を一口食べると、影龍は、美剣の顔を見つめた。

その視線に、美剣は、怒ったように言う。


「何だ?!」


頬を膨らませ見ている美剣に、優しく微笑む影龍。


「お前…いつから、伊賀にいるのだ?…何故、忍びなどになった?」


「そのようなこと…お前には、関係ないだろっ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る