【第一部】第一章 再会


今まで、敵の陣地へ行ったことのない影龍は、不安だった。

せめて、飛翔が一緒ならば…と、唇を噛む。


甲賀へと忍び込んだ影龍は、屋敷で、頭領の十造と疾風が深刻な面持ちで話しているのを聞いていた。

その話の中に、自分の名が出てきたのに、影龍は、眉をひそめた。


そこで影龍は、初めて自分の呪われた宿命を知ることになる。

自分が本当は、甲賀の者で、双子だというだけの理由で、捨てられたこと。

影龍の心の中は、怒りと憎しみで、いっぱいになった。甲賀への復讐を誓い、しばらくは、伊賀にいた影龍だが、自分と同じ顔をした光龍に会い、その心は、変わった。


憎いと思っていた相手は、あまりにも優しく、影龍の心は、憎しみから守りたいという気持ちに変わっていった。

自分でも、不思議だった。

憎んでも憎み足りないほどの相手なのに、それが出来ない。

光龍の声を聞く度、心の中を知る度、心は、光龍のことで、いっぱいになるのだ。


影龍は、影のように、光龍の側にいて、いつも、光龍を守ってきた。

光龍の為に、死ぬ覚悟でもいた。

それは、伊賀への裏切りでもあった。

抜け忍として、伊賀者から追われる運命となったが影龍は、後悔はしていない。




日が落ち、辺りが薄暗くなってきた。

影龍は、軽く瞳を閉じていた。

もう、身体の痛みは、感じない。

これまでに、何度も死ぬ思いをしてきた影龍は、心も身体も、回復が早くなっていた。


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