第3話:招魂復活

「さて、記録と噂を総合すると、この辺りで殺されたのね。

 今回だけは怨念が残っていればいいのだけれど」


 余計なお世話だと思ったけれど、昨日はジャネルを強かに酔わせて、その本音を聞きださせてもらった。

 酒場の店主、ジャックからもじっくりと話を聞かせてもらった。

 未だにジャネルに優しく接する、ロートルの冒険者からも話を聞きだした。

 信じられないほどの愛情だが、未だにジャネルは恋人の事を想い、遺体の見つかっていない恋人の帰りを信じて待っている。


「これが唯一残された身体の一部だから、大切に使わないとね」


 私はジャネルが大切にしている恋人の体毛を拝借してきた。

 ジャネルは恋人を心から信じ、死ぬとは思っていなかったから、狩りの前に形見の品など欲しがらなかった。

 だから死んだと報告を受けてから探し回って、ようやく見つけたのは、前日愛を交わした時の体毛だけだった。

 男のようにふるまっているとはいえ、流石に私も女だから、見も知らない男の陰毛を手に取るのは躊躇われるから、魔法で浮遊させて魔法袋に保管した。


「さて、ほんの少しだけ使わせていただいて、後は狩った魔獣の組織を利用させてもらって、元の身体を再生させましょう」


 私は拝借した体毛をごく一部だけ切り取り、聖女の力と神から授かった秘術を使って、元の身体を再生することにした。

 どれほど魔力があろうと、材料となるモノがなければ身体の再生などできないので、ここに至るまでに多くの魔獣を狩っておいたのだ。


「さて、長々と時間をかけて、好きでもない男の身体を見るのは嫌だから、さっさと招魂の秘術を使うけれど、直ぐに応じてよペルセス」


 私は死んだ人間の魂を呼び戻す秘術を使った。

 莫大な魔術を必要とするため、記録には残っていても使えない魔術だ。

 事実上失われた魔術と言えるだろうが、聖女の私には使うことができる。

 ただ問題があるとすれば、単に呼び戻して話を聞くだけでも大変なのに、その魂を新しく作った身体に封じ蘇らせる事が至難の業だという事だ。


 死者の魂が生まれ変わっていた場合は、話を聞くために呼び戻す事すらできない。

 恨み辛みが激しくて、怨念として残っている場合は、何百年経っていても呼び戻すことが可能だが、普通は十年以上経っての呼び戻しは不可能だ。

 まあ、恨み辛みではなく、大切な人を護りたくて、守護霊として現世に留まっている事もあるが、残念ながら私に霊を見る力はないから、ペルセスがジャネルを護っているかどうかは分からない。


「さあ、肉体は復活させたわよ、ジャネルの事が本当に好きだったのなら、とっととこの身体に憑依しなさい!」

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