5-6 王女殿下は、俺との関係を秘密にしたいらしい

「オルゴット、明かりを消せ! カーテンも閉めろ!」


 ウィルの言う通りにすると部屋は真っ暗に。それでもぶるぶるとあいつの身体が震えていることがよく分かる。

 クラスで一番の威張り屋なのに本当に何があったんだよ。

 

「……貴様、分かっているのか! 全部、貴様のせいだ! 何故、男爵家ヴァロンのとばっちりを俺が受けているのだ……戦技ヴァジュラでグレイジョイ家の者を殺せだなんて……」


 俺の知るエマ王女ってのはおしとやかで、教室でも静かに笑っているタイプ。

 そんな彼女の口から誰かを始末してしてほしいって言葉が出るのは物騒すぎる。ていうかウィルだって、エマ王女の言いなりになっている理由はなんだよ。


 こいつはウェストミンスター校の敷地を肩で風を切って歩ける天下の公爵家デュークだ。いっつも偉そうにしているんだから、エマ王女の依頼だってそんなの知るかって言えばいいだろ。


「……オルゴット、貴様! 俺の進級用件を知っているだろう……! 先日の戦技ヴァジュラで既に二人が退学した! これ以上、クラスから退学者を出すわけにはいかないのだ! エマ王女の退学は断固として阻止せねば……あの方は俺の弱みを理解し、的確に脅してくるのだ……」


 どうやらエマ王女はウィルに退学するって脅しているらしい。


「……これも全てお前のせいだから、オルゴット……」


 だから、どうして俺のせいなんだよ。

 


 でも最近、エマ王子を中心に世界が回ってる気がしていた。確かに生まれの際立った良さからウェストミンスター校での中心人物と言えるけど……俺の周りでも、エマ王女の話ばっかりだ。


「オルゴット、貴様はエマ王女に何をしたのだ……」 


 沈黙を貫く。俺はエマ王子の召使でもない、ただのクラスメイト。

 最も、とある事情によってウィルよりは深く関わってる自覚があるけれど。だから何もしてない、とは言えなかった。


 少なくとめ、エマ王女との間には浅からぬ縁がある。


「……あるんだな! エマ王女が貴様と同じチームになりたがる理由や婚約者を殺そうとする理由が貴様との間にッ!」


 ウィルが詰め寄ってくる。人を見る目があるというか、勘の良い奴だな。


「理由は知らないが、あの方はお前のことを好いている……つまり貴様のせいで俺がこんな目に合っているのだ! オルゴット、貴様には俺を助ける義務があるのだ! 嫌とは言わせんぞ……ッ!」


 今まで人のことを男爵家ヴァロン男爵家ヴァロンとさんざん馬鹿にしていた癖に。けれど、こいつの哀れすぎる姿を見ているとさすがに可哀そうだなあって気持ちになってくる。


 ……それに、エマ王女の暴走の原因は俺に理由があるようだから。


「分かった、ザザーリス。何とかする」




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