2-11 ナンバーナイン(エマ王女視点)
エマ・サティ・ローマンは王族の中でも際立った人気者であった
彼女の見た目や振る舞いは洗練され、王族としての姿が際立って理想的だからだ。彼女自身も幅広い国民から愛されている自覚がある。だけど、彼女には決定的に足りないものがあった。それが
どれだけ頭に値の張る
「――ローマン王め! 私の息子に
ミモザ特等の部屋にて。
酒に酔い、赤ら顔になった大男がわめいている。
「王族の
――最悪の中の、最悪……。
この仕打ちは無い。無いったらない。前回の婚約者との顔合わせで、エマ王女は彼に自らの不幸を打ち明けた。その結果が、これか。確かに予兆が無いわけでもなかった。ウェストミンスターの登校中、彼女の婚約者は一度もエマの顔を見に来ることも無かったのだから。
エマ・サティローマンに
だから、エマは出来るだけ人前に出ることも避けていた。ひっそりと静かに生きていく。それがエマの生き方の基本路線。
エマは縛られていた。彼らが自分に何をしようとしているのかは分かる。
ミモザに向かうと、待っていたのは婚約者ではなかった。
婚約者の父親が部下と共に自分を待っていて、エマ王女は布をかぶせられた。彼らが自分の身に何を企んでいるのか、想像するのは簡単だった。
「エマ王女は、不幸な事故に巻き込まれた――ギルティ、抜かりはないか」
酒瓶をもって顔を赤く張らした男が、部下らしき者達へ盛んに指示を飛ばしていた。中に一人、赤い眼帯をした男がいた。纏め役のようで、婚約者の父親から直接、指示を受けている。
「シルクへ罪を擦り付けます」
「……シルクか。存在も怪しい組織だが、こういう時にはうってつけだな。そうか、存在しないからこそ、都合の良いように作り上げられた組織かもしれぬ」
テーブルの上には空になったワインのボトルが幾つも置かれ、エマ・サティ・ローマンは自らの不幸を呪い続ける。
だが、彼女は自らを
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