古い

引っ越し準備を終えた日のこと。


「なにこのドア」

私の隣の大きい部屋から古いドアが出てきた。

いや、出てきたと言っても急に現れた訳ではない。

その前に荷物を置き過ぎてドアが単に見えてなかっただけである。

お母さん達は知ってたらしいけど。

「見るからにやばいドアじゃん」

古いドアは今にも壊れそうだった。

ちゃんと開くのかすらもわからない。

「物は試しだ、開けてみよう」

ドアノブに手を置いてがちゃがちゃと回す。

すると案外するりとドアが開いた。


かちゃん。


中を覗いてあちこちを見回す。

なんの変哲もない、普通の物置みたいだ。

荷物を置けるところが上と下に分かれていて、尚且つ上の段にもう一つ段がある。

しかもその段は金庫みたいに引き出し付きだ。

私はあれは開けられそうにないなと嘆息してドアを閉めようとした。

そこで気づく。


さっきから誰かに見られてるようなを感じることに。


じめじめした嫉妬っぽいイヤな視線だ。

嫌な予感がしたが恐る恐る確かめようと上に目をやる。

上に、上に。

さっき見た、の方に。


「何してんの」

「ぴぎゃっ」

途端に、肩にぽんと手を置かれて飛び上がる。

振り返ると居候がいた。

「いや、あの、えっと、ドア見つけたから…」

「ふーん?」

居候はおもむろに中を覗きこんで、ぴたりと停止した後にため息をついてドアを閉めた。

え、なに。

「ダメだろ、勝手に開けちゃ」

「う、うん、ごめん」

下に引っ越しの荷物を持って降りる。

途中で居候に話を聞いた。

「あー…あれな。あれはだよ。関わっちゃいけない系のやつ。お前、なんともないの?」

「うん」

「じゃあ良かったな。あれ、あんな近くで見たらお前

意味がわからなかったけど、きっとそういうものなんだなぁって思った。

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