月
その日はちょうど満月だった。
満月の日はよく霊的なものが多くなると聞く。
神秘的だからか知らないけど、満月になるとそういう類のものが活性化するらしいのだ。
だからかもしれない。
私はその日、魔女に逢った。
…いや、わかってるわかってる。
魔女とか頭大丈夫かこいつって皆思ったのはほんとわかってるから。
ていうか自分が一番びびってるから。
今でも信じられないしそもそもあれはもう幻覚的なナニカだと私自身が信じてるから。
猫又ん時(第十七話参照)もそうだけど、この世じゃないものを見る時ってほんとびっくりするよね。
私もあの時は真面目に精神病棟を受けるか迷ったわ。
今でも若干受けようか迷ってるからこの前ほんとに病院のまん前まで行ってしまった。
それとも行くのは眼科かな。
そんなこんなで話を戻すと、まぁ、いつも通り眠れなくて夜の散歩に出掛けていた。
軽く運動でもしたら寝れるかと思って。
家の近くにある川の橋の上まで。
てくてくと歩いていると、ふと違和感を感じた。
橋の上の手すりの上に、真っ黒い女の子が立っていた。
正しくは真っ黒いワンピースの女の子。
ふわふわとスカートが揺れていた。
思わず立ち止まって見惚れるけど、次の瞬間度肝を抜かれる出来事が起きた。
少女が飛び降りたのだ。
「ぅえ!?うそっ!?」
慌てて橋の上のところまで走る。
めっちゃ坂道だからHPが三分の二ほど減った。
「だだ、だい、だいじょ、ぶなの…」
ぜぇはぁと荒い息を吐きながら覗きこむ(はぁはぁ言いながら橋の下を覗きこむ行為って今思えば充分にやばい人だね。よく通報されなかったね自分)。
すると不思議なことにあの少女はどこにもいなかった。
ほっとしてずるずると座り込もうとする。
目の前で死なれちゃイヤだからね。
と、視線の先にひらりと舞うスカートが。
ぽかんと目を見開く。
だってそれは余りにも現実離れした光景で、とても神秘的な光景だったから。
川の上に少女が立っていた。
真っ黒いワンピースに魔女っ子の帽子。
それから箒を手に持って。
思わず感嘆する。
なぜだか懐かしい感じがしたけど、それもやっぱり満月のせいなのかな。
少女は私をちらりと見やると薄らと消えていった。
満月の日にとんでもないものを視てしまった。
もう、どれもこれも全部満月なんかのせいだ。
私はため息をついた。
皆も、もしかしたら視れるかもしれない。
満月の日に、魔女っ子が。
あ、視えたら教えてほしいかな…そうしたら幻覚なんかじゃないと自分を信じれるだろうから…。
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