私の家では、トイレに行くときに大きな鏡の前を通るのだが、その鏡がちょっと曰くつきなものである。


真夜中十二時。

トイレにいこうと部屋を出る。

「…さむ…」

冬の冷気は時に身体の芯をも冷やす。

そんな寒さに耐えながら階段を降りてトイレを目指す。

と、大きな鏡が見えてきた。

鏡の向こうは窓だから、月の光が一筋、鏡をきらりと照らした。

いつもは幻想的だななんて思うのだが。

「え」

今日はなんか変だった。

大きな鏡の向こう。

なにかが近づいてくる。

ふとこんな階段を思い出した。


“真夜中ちょうどに鏡の前を通ると、鏡の中の自分と入れ替わってしまう”


近づいてくる、ナニカ。

得体の知れない嫌な予感がして、顔が引きつる。

段々と姿を現したそれが。


とわかった時。


ばたんっ!


「ぅわあぁ!?」

小さく悲鳴をあげる。

口を抑えて振り返ると、居候がトイレの扉を勢いよく閉めていた。

「なんだ、いたのか」

いたのかじゃねーよ…。

未だに心臓は鳴り止まなかった。

さっきのは一体なんだったのだろう。

自分に問いかけながらトイレに行って寝た。

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