連れ去る

昼寝中に夢を見た。


気がつくと、どこかの家電量販店で掃除をしていた。

無駄に長い廊下の一部で、年上のお姉さんと年上のお兄さんと一緒に、エアコンを掃除していたのだった。

すると突然、左側にいるお兄さんが言い出した。

「ここ、出るぜ」

「出るって?」

「お化けだよバカ」

「そんな訳」

お姉さんは笑いながら否定するけど、私にはなんとなくそんな予感はした。

お兄さんは話す。

「マジだよ。あそこの扉あるだろ?そこの部分を掃除してたら、隣にいつの間にか誰かがいるんだよ。視えない誰かがな。そしたら、あの奥の黒いとこあるだろ?穴。あそこに連れ拐われるんだ」

そう断言した。

お姉さんが首を傾げる。

「ほんとなの?」

「ああ。だって、」

お兄さんが哀しげに言った。

首元のペンダントが揺れる。


「俺のんだから」


私は思い出す。

目の前にいるにっこりした女性。

小さな手で私の手を握ってくれた男の子。

その人達は、ヘビに纏われカラスに追い立てられて、ナニカに引っ張られながら、奥のあの黒い空間に消えていった。

「…怖い、ですね」

「だろう?でもほんとなんだ。だから気をつけた方がいいぜ」


お兄さんは私を見て呟いた。


「今度はきっとの番だから」


その次の瞬間だ。

お兄さんが奥の黒い空間に吸い込まれるように消えたのは。

ナニカに引っ張られるように。

ヘビをその身に纏わせて。

カラスがカァカァと泣き喚く。


次はだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る