車内2
駐車場とかで、車と車の間を通るのに少し抵抗がある。
それは通って出た瞬間に、走ってきた車と鉢合わせして危うく轢かれそうになったことも関係しているが、ここではもう一つの方を紹介したい。
蒸し暑い日だった。
朝からニュースを見ていた。
なんでも、小さい子供が今の時期に車に置き去りにされて亡くなったらしい。
車の中は気温三十九度以上になっていた。
「うっわ…最低じゃん親…」
「暑そう…可哀想に…」
そんな話を居候としながら、出掛けるために車に乗り込む。
出掛け先で、車から降りて駐車場を通った時だった。
時間的に夕方くらいだった。
ふと、一台の車の中で影が動いたのだ。
「?」
朝、あんなニュースを見てしまったばかりか、余計気になって仕方ない。
もしも、赤ちゃんとかがあの中にいたら…。
いてもたってもいられず、その車に走り寄る。
中を覗き込んだ。
ばんっっっ!!
「ひぁあっ!?」
突然、小さな手のひらが目の前につく。
悲鳴をあげてその場で固まる私。
子供の手みたいだ。
その手はずるずると下に下に降りていった。
目線を下にさげる。
目があった。
口もあった。
なぜか目が離せない。
ソレはじっとこっちを見ていた。
口が動く。
「 」
どうしようかと途方にくれた。
「…ごめんね」
そう一言呟いて手を合わせると、その子はすぅっと消えた。
哀しそうな瞳が忘れられない。
そして、きっとこう言われたんだと思う言葉も。
『 た す け て 』
だから私は車の間を通るのが苦手だ。
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