まって

自転車で下り坂をぴゅーっと下っていた時のこと。

私は下り坂が好きだ。

なんてたって気持ちいいし。

それに曲を聞きながら下るときの爽快さ。

あれがたまらない。

だからその日もスピードを緩めず、むしろあげて下っていた。

その時。


「まって!!」


そんな声が聞こえて、目の前にふわりとピンクのスカートが。

「うわうわうわ、ひゃあぁあ!?」

慌てて急ブレーキ。

だが、止まれずに自転車ごと転げる。

がっしゃああん!!

「いって…」

涙目になるほど痛かった。

そうだ相手の人は、と思って慌てて立ち上がって周りを見る。



…うん、何回見ても見事に誰もいない。

擦り傷が痛む。

「まじか…」

そう呟いてから自転車を起こす。

まだ坂道は続いていたが、今度は自転車を降りて下った。

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