猫又

家の裏側が見える窓がある。

裏は猫が通るような狭い道である。

夏の暑い夜の間は、空気を通すためにそこを開けていることが多い。


そんな夏のある日のことである。

私はダラダラとその窓が見える位置でゲームをしていた。

ひとしきり遊び終わって、ふと窓を見る。



一瞬びくっとしたけど、何のこともない、普通の黒い猫だ。

可愛いな、でもエサは無いぞ、とか思って見つめ返していたら、一言ニャアと鳴いてとことこ歩いていった。

なんだったんだろうと思いながらも可愛い猫を見たせいか、ほっこりしてゲームを進めた。


その次の日。

夜遅くに自転車で道を通っているといきなり目の前に猫が飛び出してきた。

「うわっ!?」

次々と飛び出す猫。

なんだなんだと自転車を降りる。

すると、その猫達は私の周りを囲み始めた。

動くに動けない私。

オロオロしてると親玉らしい猫がゆったりと出てきて、私の正面に座った。

前日に裏で見たあの黒猫だった。

「えー…私今エサ持ってないよ?食べる物もないし…」

そう呟く。


《エサはいらにゃい。オマエはそこにいろ》


なんか声が聞こえた。

呆ける私にそれをじっと見つめる猫達。

今のは…?

猫が喋ったの?まさか?まさかね?

え、私もしかして動物とお喋りできる能力とか開花しちゃった?いやいや嘘だろ、猫が話す訳。

そんな問答を頭の中で繰り返していると、親玉黒猫は一言ニャアと鳴いて向かい側の細道に入っていった。

それに続々と猫が続く。

その後ろ姿を見てなるほど、と合点する。

幽霊がいるこの世だ、妖怪もいるだろう。


その親玉黒猫のしっぽはに別れていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る