屋上

私の家の近くには五、六階建てのマンションがある。

結構高さがあり、屋上を見る時は首が辛い。


私が中学生の時である。

部活で遅くなってそのマンションの前を通った。

路地からはとても美味しい匂いが漂ってくる。

お腹が空き過ぎていたので早く帰りたい。

そう思って足を早めた。

マンションの前をもうすぐ通り過ぎようかという時。



真後ろで人が倒れる音がした。

いや、この場合、倒れるというよりも潰れる音だ。

そう、例えば飛び降りをした時みたいな。

恐る恐る後ろを向く。

何もいない。

なんだ、と思って前を向いた。



めっちゃ倒れていた。

四方八方に血と脳漿を飛び散らかしてそいつはニヤリと笑った。


「いたいね」


そう呟いて消えた。

いや当たり前だろ、屋上から飛び降りたんだから。

思わず突っ込んでしまったが、よくよく見ると私はそいつを見たことがある。

家の二階のベランダからよく視る人だ。

いつも屋上の端ギリギリにいて、物憂げに空を眺めていることが多々ある。

たまに落ちそうになってて、私は洗濯物を干しながらよくハラハラして見ていた。

なるほど。

きっと今日は足を踏み外してしまったのだろうな。

そう思って帰路を急いだ。

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