屋上
私の家の近くには五、六階建てのマンションがある。
結構高さがあり、屋上を見る時は首が辛い。
私が中学生の時である。
部活で遅くなってそのマンションの前を通った。
路地からはとても美味しい匂いが漂ってくる。
お腹が空き過ぎていたので早く帰りたい。
そう思って足を早めた。
マンションの前をもうすぐ通り過ぎようかという時。
どさ、べちゃり。
真後ろで人が倒れる音がした。
いや、この場合、倒れるというよりも潰れる音だ。
そう、例えば飛び降りをした時みたいな。
恐る恐る後ろを向く。
何もいない。
なんだ、と思って前を向いた。
いた。
めっちゃ倒れていた。
四方八方に血と脳漿を飛び散らかしてそいつはニヤリと笑った。
「いたいね」
そう呟いて消えた。
いや当たり前だろ、屋上から飛び降りたんだから。
思わず突っ込んでしまったが、よくよく見ると私はそいつを見たことがある。
家の二階のベランダからよく視る人だ。
いつも屋上の端ギリギリにいて、物憂げに空を眺めていることが多々ある。
たまに落ちそうになってて、私は洗濯物を干しながらよくハラハラして見ていた。
なるほど。
きっと今日は足を踏み外してしまったのだろうな。
そう思って帰路を急いだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます