雑踏の中で彼を見つけたら


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 この小説は『STAR』が解散してそれぞれソロになった、もしもの世界のお話です。それでも良い方はどうぞ。




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 雑踏の中で彼を見つけたら、自分はきっと彼に駆け寄るだろう。会いたかったから。話したかったから。

 自分で決めて選んだ道だったけど、胸の中にある二人の想い出は絶対に消えない。


 後悔していないかと言われれば、それは嘘になる。だけど二人が離れる事が生まれる前から決まっていた運命ならば……



 そしてきっと……




―――


「辻村君?」

「……何?」

「大丈夫?何か元気ないよ。」

「ごめん、何でもないよ。……すみません!日本酒ください。」

 ちょうど通りかかった店員に注文を頼む。そして目の前の人物に視線を移した。


「でもさ、お前とこうして飲むのも久しぶりだな。裕。」

「そうだね。」

 裕は自分のワイングラスを傾けながら微笑んだ。



 仲本と別れて半年。それに伴って生活スタイルは大分変わった。


 自分はもっとドライで冷静で、ぐだぐだ引きずらないタイプだと思っていたが、実はそうじゃないらしいと知ったのは別れてすぐの事。あいつがいないだけで自分はこんなにも寂しい人間になってしまった事実が、ショックだった。


 会いたいと思うけれど、自分からは会えないと思っている。それでもいつか会える日を夢見て、もう少しあと少し、そう自分に言い聞かせながら今を懸命に生きている。


 俺が忙しい彼を救うのだと、支えるのだと勝手に思っていた。だからいつも側にいた。

 だけどそれは間違いだった。完全な思い上がりだった。


 本当は俺の方が、救われていたのだから……




―――


 雑踏の中で彼を見つけたら、俺はきっと彼に駆け寄るだろう。本当は会いたかったから。話したかったから。

 自分で決めて選んだ道だったけど、胸の中にある二人の想い出は絶対に消えない。


 後悔していないかと言われれば、それは嘘になる。だけど二人が離れる事が生まれる前から決まっていた運命ならば……


 そしていつか再会出来る日がくる事も、揺るぎない二人の運命ならば……



 何処かで彼を見つけたら、今までごちゃごちゃと考えていた事など嘘のように、真っ先に駆け寄るだろう。


 何十人、何百人、何千人の中からだって、探し当てられる自信がある。

 だって彼は俺が唯一、心から愛した人だから……

 そして彼もきっと、俺に気付いてくれると信じたい。




―――


「……あれ?仲本?久しぶりだな!」

「辻村……お前、声でけぇ~よ……」




―――


 雑踏の中で彼を見つけたら、俺はきっと彼に駆け寄るだろう。


 背を向けた彼が、少し嬉しそうな表情で振り向いてくれる事を願いながら……



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