オオカミ少年と閻魔様
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注意書き
このお話はパラレルです。設定としてはみんな少5くらいで、何年か前に公開された映画のタイトルだけをパクっております。内容は全然関係ないです。
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昔々あるところに、いつも嘘ばかりついちゃう可愛い可愛い女の子……じゃなかった、男の子がいました。
「お、俺だって好きな人くらいいるし!」
「へぇ~、誰、誰?僕たちが知ってる人?」
「だ、誰って……」
「あ~!辻村君、また嘘つくんだぁ。いーけないんだ、いけないんだ!!」
「うるさい、裕!」
「ムキになるのが怪しいなぁ。ね、晋太?」
「そうそう!浩ちゃんもたまに空気読むよね~」
「たまにってどういう事よ。」
「っていう事で辻村君、真相はどうですか?」
突然裕君にマイクのごとく拳を差し出され、その辻村と呼ばれた子はほんのりと頬を染めた。
「………だよ……」
「え?ごめん、聞こえなかった。」
「あいつだよ、あいつ!」
「あいつって?」
全員揃って首を傾げた姿を見た辻村君は、覚悟を決めたように一つ深呼吸をすると大声で言った。
「あいつだよ!仲本のバカだよ!!」
……シー……ン………
「……んだよ、うるせぇな。そんなバカでかい声出さなくてもちゃんと聞こえるって。」
「な、な……何で……?」
「せっかく人が気持ち良く昼寝してたのに、邪魔すんじゃねぇよ。つぅか、お前らさっきから気付いてただろ。」
「…………」
辻村君の後ろから出てきた黒いオーラを纏った男の子は、裕君と浩輔君と晋太君の方を横目でジロッと睨んだ。睨まれた三人は、バツが悪そうな顔で俯いた。
「なっ!お前ら、仲本がいるって知ってて俺を………」
「ごめん、辻村君!でもまさか相手が仲本君だとは思わなかったから……」
口ではそう言いながら、ちょっとニヤッとする裕君。浩輔君と晋太君の方を見ると、二人も同じような顔で見ていた。
「う、嘘だから!!」
「は?」
「仲本の事なんて好きでも何でもないって事!」
「あ、辻村君!!」
真っ赤な顔でそう捲し立てた辻村君は、森の中へと走って行ってしまった。
「あーあ、行っちゃった。どうする?」
「しょうがねぇな~、俺が行ってくるよ。」
「あ、お願いしま~す。僕らはもう帰るね。」
「って浩ちゃん、切り替え早っ!!」
「じゃあね、仲本君。辻村君よろしく~」
「裕ちゃんもかい!……って事で仲本君また明日ね~」
「じゃあな。」
颯爽と辻村君の後を追っていく仲本君の後ろ姿を眺めていた三人は、やがて誰からともなく歩き出した。
(まったく、世話が焼ける二人だこと………)
―――
「お~い!辻村ぁ~?辻村巧海さ~ん!!」
森の中へと入った仲本君は、大声で辻村君を呼びながら歩いた。でも中々見つからなくてさすがに焦ってきた時、草の陰から茶色い髪の毛がピョコンとはみ出てるのを見つけた。仲本君はいつもの意地悪な笑顔を浮かべながら近付く。
「みぃ~つけた!!」
「わぁっっ!!!」
面白いぐらいに飛びはねた辻村君に、仲本君は我慢出来ずに噴き出した。
「ふはっ!なんつぅ声出してんだよ。」
「仲本………」
「いつまでここにいるつもりだよ。もう暗くなるぞ。」
「仲本、一人で帰れば。」
「んな訳にいくかよ。ほら、帰るぞ。」
仲本君から手を差し出され、辻村君は思わず後ずさった。
「あのさぁ、取って食いやしねぇから。」
「お前ならありえそうだと思って……」
「まぁ、ある意味ではそうしたい気持ちは山々だけどな……」
「え?」
「いや、何でもない。」
頑として動かない辻村君に焦れた仲本君は、おもむろに近付いた。
「え、ちょっ……なかっ!」
「あの話、嘘なのか?」
「……え?」
「俺の事、好きだって。」
「そ、それは……う、嘘に決まってるじゃんか。晋太に好きな人がいるって聞いて、なんつぅか口から出任せっていうか……」
「へぇ~……」
「!!」
今まで聞いた事のない仲本君の低い声に寒気を感じた瞬間、辻村君の体は暖かいぬくもりに包まれていた。
「な、仲本?」
「好きなんだろ?俺が。」
「………」
「なぁ?」
「……好きじゃない。」
「好きなんだろ?正直に言えよ。言わねぇとずっとこのままだぞ。」
「それは困る……」
「じゃあ言うしかねぇな、ほら。」
ゆっくりと体を離して見つめてくる。その真摯な瞳から溢れ出てくる優しさに、辻村君の胸は高鳴った。
「好き……」
「聞こえない。」
「好き!大好きなの!!」
「……ヤベー、可愛すぎんだよ……」
「え?……わぁっ!?」
突然その場に押し倒された辻村君は大声を上げた。
「俺も。」
「……///」
不意に囁かれた言葉に今度は全身真っ赤っ赤になった辻村君でした。
めでたし、めでたし♪
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(もう二度と戻ってこれない世界に足を踏み入れてしまったオオカミ少年の人生は、たぶんきっとバラ色で埋め尽くされる事でしょう。世にも恐ろしくて優しい、閻魔様の庇護の下で………)
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