Happy Whiteday♪
―――
「あれ?」
控え室に帰った俺は、ソファーの上に置かれた見覚えのない箱に首を傾げた。
「何だ、これ?」
俺は首を傾げたまま、ソファーに近付いて行ってその箱を手にとった。
「開けて、いいのかな?」
小声で呟くが、俺の鞄の上に置かれていたのだ。俺の物ではないけどきっと誰かが俺に持ってきてくれた物だろう。そう勝手に解釈して、俺はその箱を開けた。
「キャンディー?」
そこには色とりどりのキャンディーが入っていた。
「何でキャンディー?」
蓋を閉めながらまた首を傾げる。しばらく考えた後、俺はハッとカレンダーを見た。
「あっ!」
気付いた瞬間、俺は箱を持ったまま廊下に飛び出した。
『ホワイトデー?んなもん、俺が用意する訳ないだろ?』
三日前、仲本と交わした会話を思い出した。期待はしていなかったが、あっさりと言われて少し落ち込んだものだ。だから本当に期待していなかった。
メッセージも何もなかったが、これが仲本からの物だと確信した俺は、真っ直ぐ会議室に飛び込んだ。今日仲本は会議室に直行したはずだから、帰り支度をしているだろうと思って。
「仲本!」
思った通り仲本は帰り支度をしていた。勢い良くドアを開けた俺をゆっくり振り向く。その顔は、イタズラが見つかった子どものようだった。
「バレた?さっさと帰ろうとしてたんだけどな。」
笑いを含んだ仲本の言葉など、全然頭に入ってこなかった。
「何でこれ……お前、用意する訳ないって!」
「素直に言う訳ねぇだろ、この俺が。それに一応サプライズ的に渡したかったから、お前から言われた時はちょっと焦ったけど。」
コートを着ながらそう言う仲本を、俺は呆然と見た。そんな俺を仲本はさも可笑しそうに見ると、さっさと荷物を持ってドアへと歩いて行く。
「仲本?」
「ほら、行くぞ。俺んちでいいだろ?」
ドアノブに手をかけながら振り向く。
「え?」
「何してんだよ。行くぞ。」
「お、おうっ!」
俺は慌てて仲本を追いかけると、待ってくれていた彼の隣を歩く。
「荷物、取りに行ってくるからちょっと待ってて。」
「おぅ。」
廊下に仲本を待たせて控え室へと向かいながら、にやける頬を押さえられなかった。
「ありがと。」
面と向かっては言えない感謝の言葉を、俺はそっと呟いた。
―――
「でもさ、何でキャンディー?」
「え?ホワイトデーつったら、キャンディーだろ?」
『……まぁ、こいつらしいか。』
俺は仲本に気付かれないように、そっと微笑んだ。
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