二度目の告白 後編


―――


「うん……わかってる、っていうかわかってた。仲本君の心にはたった一人の大事な人がいるって。ただ僕の気持ち、改めて知ってもらいたかったんだ。」

 晋太は俺を見た後に、ふっと思い出したように辻村を見た。辻村はいまだに状況がわからないのか、口を開けたまま呆然としていた。


「辻村君、そういう事だから。」

「そういう事って……どういう事だよ?」

「僕、本気だって事。辻村君にも聞いて欲しかったんだ。」

「何で俺?俺関係ないし。」

「関係あるよ!だって仲本君はっ……!」

「晋太!!」

 そこまで言った時晋太が辻村に何を言おうとしているのか気付いた俺は、とっさに大声を出した。そして晋太の腕を引っ張って部屋の外に連れ出した。


「お前なぁ……」

「ごめんなさい……」

「まぁ、いいけどよ。辻村に知られなくて良かった……俺、あいつには絶対言わないつもりだから。だからお前も余計な事言うんじゃねぇぞ?」

「どうして?好きだったら自分の気持ち知ってもらいたいって思うの当然だよ!だから僕……」

 俯いたまま体を小刻みに震わせる。俺はそんな晋太を申し訳ない気持ちで見つめた。


「晋太の気持ちはもちろん嬉しかったよ。お前の気持ちには応えられないけど、何処かでお前に自分を重ねて見てた。どんなに頑張ってもさ、俺らは男同士。それは変えられないんだよな。だったらさ、例えこのままがずっと続くとしても俺はあいつを好きになった事、後悔しない。お前だってそうだろ?」

 少し照れ臭くなって、晋太から視線を逸らす。目の端に微かに頷く晋太が映った。


「だから俺は言わない。勇気がないだけかも知れない。お前みたいに真っ直ぐに自分の気持ち伝えられないのは、臆病なだけかも知れない。けどさ、後悔しながら生きていきたくはないから。もちろん辻村に言う事がダメな方に行くとか思ってる訳じゃなくて、俺の誇りの問題かな?」

「誇り?」

「そう。辻村に言ったってフラれる事は目に見えてる。俺はいつだって格好つけてたいんだよ。格好良く、じゃなくて格好つけてたい。本当は無様で臆病で格好悪いのに、堂々と格好つけてるの。何かそっちの方が格好良くない?俺はそんな奴でいたいの。仲本亘の人生に、男にフラれるなんて項目、あっちゃいけないんだよ。」

 そこまで言うと、微笑みながら晋太を見た。


「なぁ~んてな。」

「……へ?」

「嘘だよ。ただ単にフラれるのが恐いだけ。お前のように正面からぶつかっていく勇気がないだけ。格好つけてるだけの、ちっちゃい男でしょ?俺って。」

 呆気にとられた顔をしている晋太を見つめると、一歩近付いて耳許で囁いた。


「ありがとな。嬉しかったよ。」

 言った後自分の耳が赤くなるのがわかったけれど、俺は平静を装って目の前のドアを開けて中へと入っていった。



「格好良すぎだよ、仲本亘……」


 ドアが閉まる寸前に聞こえた晋太の呟きを、俺は真っ赤な顔でスルーした……



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