Quanji-22:愚鈍デスネー(あるいは、創造翼だけは/誰も奪えないところタッカラー)
♢
いきなりとんでもない事を美麗妖精に真顔で促された僕だったのだけれど、ええーと「それ」をいたすことで何か強力なパワーでも生まれるというのでしょうか……でも、ええーと何から。
「いやあの大丈夫かなその……サイズ的にというか」
「無問題ですマイマスターッ!! しかるべき時にはしかるべき……この場合はマスターのサイズに合わせ伸展しますゆえッ!! そ、その辺は見た目よりも……じゅ、柔軟性あるんですよ?」
小首を傾げられながらそう赤らめた顔で悪戯っぽく言われてしまった。えーとえーと。
「と、とは言えこのような非常事態で……その、僕の方もね、恥ずかしながらさらに初めてでもあるわけでして、あの、うまく機能するかどうかが非常に不安なんだけれど」
「……こういう時だから、こそですよ? マイマスター。だ、だいじょうぶ、マスターはそのままで、ボクの方から……行きますから……」
高速飛翔とランダム旋回を繰り返しながらという明らかな異常事態であるものの、至近距離で交わされる艶っぽい言葉は妖精ちゃんの湿っぽくなってきた吐息と共に紡がれ出されてくるわけで。それは確実に僕の視覚聴覚嗅覚を司る器官に染みわたっていくのであり。僕はもうそろそろ慣れて来ていたはずの非日常感に、改めて酩酊させられていくような感じを覚えるばかりだけど。しかし、
……例えいかなる場合であろうとも、据え膳は喰らうが漢……
欲望という名のヘドロじみた何かを、男気という真綿のような、液ものを包み込むにはいささかザルであるところの何かでくるんだような思考が浮かぶ。だがそうだよ、断じて心に疚しきことなど何もないッ!! 目の前の敵を倒すため!! それが異世界の流儀と言うのならッ!! 臆せず飛び込む、それがこれからの僕の生きざまよぉぁぅッ!!
ふ、と脳裡に僕をこれでもかと蔑むように見下ろしてくるエンドーさんの
「エレクト=リック・パゥワー『400%』充填完了ッ!! いきますよッ!! マイマスターぁぁぁあッ!!」
妖精ちゃんが顔を強張らせながらも、その柔らかそうな青銅色の髪を向かい風にたなびかせながら、そしてその下に覗く艶めくうなじを見せつけながら、「鼎」のふちに登り上がると肘膝を伸ばしたまま四つん這いの姿勢を取るのだけれど。ええ? この状態で? 僕はこれに掴まっているだけで精一杯ですぞぉ……?
とか思ってた、その刹那だった……
「『
のっぴきならなすぎる単語群が、流星のように虚空を駆ける……瞬間、妖精ちゃんが乗った「鼎」が青銅色の光をその内側から放ったかと思った瞬間、その鍋状の物体は自らいくつかの
その後に続いた言葉が「
しゅれでぃんがぁおあねこ、みたいな呻き声が、反り返りきった僕の喉元から放たれる。両肩、両腕、胸、腹周り、両膝に、断続的に熱された焼きゴテを押し当てられた感覚が与えられた挙句、とどめとばかりに額の所に妖精ちゃんの身体が変化した金属の輪っかのようなものが嵌められ、ようやくそれで一応の波は引いていくものの。
思てたんと
「……!!」
自らの身体を、白目がちだった状態から何とか黒目を降ろして確認してみる。そこには、「鼎」を叩き割った破片のような、前衛的な金属オブジェ的なものが、学生服の上から吸い着くように貼り付くようにして、熱を感じた部分にきちりと装着されているのが見て取れたのであって。
それは何だか僕の身体を
<『
意識まで合わさってしまったのか、妖精ちゃんの「声」が僕の脳内に響いてくるようになったよ、そして「
完全なる諦観が僕の脊髄を貫いた時、
「おおおおおおおおッ!! 『
開き直りという名の全能感が、脳の中のキマるべきところにキマったような、そんな「覚醒」と言うべきなのかいや言うべきではないだろうな的な感覚がしたと思うやいなや、既に僕は声帯をこれでもかと震わせておったわけで。
舞い降りて来ていた、己を表すその言葉を言い放つんだッ!! 意味不明の義務感はそれでも確実に僕の精神の背中を押して来て。次の瞬間、
「『アーク
炸裂する青白い光の奔流。を背に、自分でも何でか分からんうちに、中空にてこれでもかのキメポーズ。そして自分でもよう分からんのたまいを意識を何者かに操られるかのように解き放ってしまっているのであったェ……
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