Quanji-05:饒舌デスネー(あるいは、始まりたい/始まらないという名の小宇宙)
とか意気込んでみたものの全容はいまだ掴めぬじまい。説明を小出しにしているというよりは今まさに創られてるんじゃねだいじょうぶかな的な異世界ならではのメタい不安が側頭葉の辺りに浮かんで来たりもするけどそれは振り払って、でも「漢字」って……どう関わってくるんだろう。「部首なんとか」とか言ってたりもしてたけど……僕の能力が生かされる、そんな僥倖は果たして訪れるのだろうか……とか少し鼻息を荒げながら説明を待っていたりしていたら。
「さあお引きなっせニャン、『
猫神様が無理やりな語尾にて身も蓋も無さそうなさりとてまっとうな思考を挟ませない初見固有名詞を執拗に挟み込みながらそれでいてとても重大なことをさらりと言ってのけてきたことに、あ、この人は見た目以上にヤバいんだということを知らしめられつつ、何かもう有無を言わさぬ流れにて前に座っていた人らからきちんと整列してその「ビンゴ」状のものを整然と廻しているよそしてこの静謐さが悪夢の前の「溜め」みたいな間で本当に怖ろしいよ……
しかし落ち着け。「漢字の部首の何らかがそれぞれに割り振られ、それにちなんだ魔法のような能力が使えるようになる」というような、そういうことなんじゃないか……? 何となくだけどそんな感じがしてきた。というか僕にそれを悟らせることで物事を先に進ませたいという、どうにも定まらない猫神様とは別のベクトルからの強い意志が、僕の大脳に直で照射されているかのようだよ、い、いいんですよね?
おもねり以外の思考行動を起こせていない自分に大分徒労感を覚えつつも、僕はいま唯一許されている(はず)の考えることに集中しようとする。
「部首」……漢字を為す
例えば「火」……「ひ」「ひへん」という能力が与えられたとしたらどうだろう……「炎」、「爆」とかのメジャーな攻撃手段から、「炊」「炙」「炒」とかの日常便利そうなやつ、「燦」とか「燿」の概念的なものも問答無用で強そうだ……あ今思ったけど「熱」「然」とかの下につく「れんが・れっか」も含まれる……こ、これは無敵万能じょのいこ……
もしそんな
「……」
この異世界でハーレム王となること、それすら夢では無いのではなかろうか……
興奮すると唇の左端が不随意に脈動してしまうのは僕の度し難くキモい
刹那、だった。
「ちょっとさぁ、うしろ詰まってんだけど。早く行けよなドチビ」
背後からそのような気だるそうでいてはっきり棘のある言葉が僕の背中にぶつけられる。振り向くとそこにはクリーム色のセーターの上からでも分かるほどの双球が構えられていて僕の視点をあらがえないほどの強力さをもってしてそこに固定させてくるのだけれど。
「どこ見てんだよ、はぁあチビさっさとやってくんないかなー」
振り仰いだその先には、こちらを明らかに侮蔑……というか邪魔な物体としか見てなさそうなそんな多分に意図的ではあるのだろうけど、見下したような、それでいて整っていて美麗な顔があったわけで。
ぬうう人の身体的特徴をあしざまにのたまうこと罷りならん……と、またも思考が宝暦っぽい方面に行ってしまう僕だけれど、161cmと公称していたものの入学直後の身体検査で156cmであることが露呈してしまい、「
いやそれよりも。
「……『遠藤ダリヤ』?」
思わず呟くようにぽつりと言葉は漏れ出てしまっていたけど。その整っていながらクールフェイスに常態アヒル口というアンバランスさがさらにの根源的な蠱惑さを醸すという、そしてすらり伸びた手脚は常にポーズを決めているようでいて
僕のその呟きを聞いてか聞かずか、目の前の超絶美少女モデルはわずかにその美顔を歪めると、チッと舌打ちをするばかりなのだけれど。ええー、
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