働き方改革

生産性が低い低いと、かつて経済ナンバーワンだったこの国の産業の勢いも惨憺たるこき下ろされ方で、アリの一穴を穿つような一手がほしい。

企業というものも、官僚機構ほどは動きが鈍くないにせよ―――否、企業も何十年もの伝統を持つに至って官僚化してしまうのだ―――、業態だとか勤務の様態だとかがそうそうたやすく変革するものでもない。

首都圏では、一流の一部上場から中小の中堅どころに至るまで、勤務する社員は相変わらず、長時間電車に揺られ苦痛な通勤を強いられている。東京一極集中の弊害もあるが、多くの企業が本社を東京に置いているのだし、通勤地獄は今もって尚解消の見込みは立たない。どこぞの知事殿は、二階建て電車で対応するという奇策を持ち出してきたものの、その構想もいつの間にやら雲散霧消してしまった。

長時間の通勤により既に会社に到着した時点で疲弊している社員たちが、最もコンディションの良い自分を会社に捧げることすらままならないのである。加えて、首都圏一極集中の弊害により賃貸住宅の家賃も底堅く、都心に近ければ近いほど家賃が高額になるため、給与の多寡や可処分所得に応じ通勤距離、そして通勤時間も必然的に増減する。それは、企業にとっては、遠方からの出勤になればなるほど出社時に既にお疲れ度が増している社員に対し高い通勤手当を支給し、心にもない優遇を施すことになる。

そんな本末転倒とすら思える勤務形態、それは産業革命以来続く労働集約型の「皆でオフィスに集合し仲良く働く」というスタイルを、百年近くこの国は続けている。一家の稼ぎ頭が家庭を後にしビジネスの最前線に赴き、銃後を専業主婦、子供たちが守るという昭和スタイルの惰性がいまだに続いているのである。「会社に出勤すること」が「働くこと」と等価であるという集団催眠から醒めさせずにいるのだ。

フリーアドレス、時差出勤、ダイバーシティ、色々な施策を打って、企業の刺激を促してはみたものの、打てど響かずだった。

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