第10話 プライドの不幸

 プライドは己を強くする。

 自分で自分に重りを課す

 それにより更なる高みを目指せるだろう

 

 俺はプライドを持っている。

 自分を馬鹿にされると怒るし殴る。

 プライドで自分の行動を制限している。

 それが更なる高みに近づく一歩だと考えて誤魔化しているが。

 プライドのせいで自分が弱くなっている気がする。

 だが、プライドすら守れない漢が強くなれる訳が無いと思っている。

 ある日俺を煽ってきた慎吾を殴ろうとした瞬間慎吾はすごいスピードで土下座して謝って来た。

 何故簡単に土下座ができるのか。

 こいつにはプライドがないのか気になった。

 なんで煽った奴に頭を地面につける事ができるのだろう。

 「お前にはプライドとかねーのか」

 ふと気になって土下座している慎吾に聞く。

 「はい。すみませんでした。」

 「質問に答えろ」

 「はい。プライドがない事が僕のプライドです。」

 何言ってんだこいつ。

 その時はそれで終わった。

 だが今思うと少し理解できる気がする。

 プライドがないと言う事は足枷がないと言う事。

 足枷のある奴と足枷のない奴どっちが強いかは明白だ。

 慎吾は俺と喧嘩した時、生きる事にすごく執着していた。

 プライドを持たない慎吾は殺されると思った瞬間逃げたり、騙したり、裏をついたり、相手を殺したりだってするのだろう。

 それがどれだけ不格好でも生き残るのはあいつだ。

 だが俺は不格好を好まない。

 カッコよく倒したいではないか。 

 冴子が見ていたらどうするか。 

 プライドはあるが男は男。

 好きな人に誇れない自分では嫌だから。

 俺は正々堂々と戦いたい。

 気に入らなかったら弱点を無視してそこを壊す。

 それで何が悪い。

 勝つのならかっこよく勝ちたいではないか。



 

 悪魔がこちらにすごいスピードで向かってくる。彼の走った事により土が舞う。

 悪魔との距離が縮まり悪魔の拳が俺の顔の10センチメートル前まで、きたところで俺はしゃがみ刀を出す。

 そして悪魔が俺の顔に向けていた拳、腕を一刀両断した。縦に切れた腕の奥には舞っていた土煙は無く、刀を振った直線だけには薄暗い世界が広がっていた。

 「マジかよ」

 すかさず片手で悪魔の服を掴み顔に刀を刺し込む。

 再生には少し時間が必要となる。

 早く再生に必要な核を壊さなければ

 再生して最初からになってしまう。

 再生には黒紫霧(ダークミスト)を使うから少しは体力を使うが、普通なら顔を刺されたら死ぬのに体力を消費するだけで再生するなんてチートすぎる。

 だが、武蔵はポポリオンから離れた。

 「は?どゆこと?」

 ポポリオンは謎だった。

 今なら核を破壊しなくてはいけない場面。

 そこで何故離れるのか。

 考えて1秒が経ちポポリオンは狙いがわかり武蔵にすごいスピードで近づこうする。

 だが、遅かった。

 

    バゴーーーーーーーーン

 

 爆音が響く。

 鼓膜が破けるかと思うほどだった。

 土や砂、岩などが粉々になっていた。煙が舞う。

 ジェットコースターの風圧の比にならなかった。

 武蔵は悪魔の服を掴んだ拍子に極小のリモート爆弾をポポリオンに付けたのだ。

 煙で見えないが避けている様子はなかった。

 あの爆発を喰らうと必ず死ぬ。

 アビリティーで操作して範囲を狭くする代わりに威力をかなり上げた。

 爆弾を作るのに体力をかなり消費した。

 立ち上がりGPSを使って冴子を探そうとする。

 フラフラな足で立ち上がり走り出そうとする。

      

       スパッッ

 

 急に視界に地面が映る。

 地面を少し回って自分の足が写る。

 地面には血の水溜りができていた。

 そうか

 俺



       死んだのか

 

   田野森武蔵 午後2時32分死亡。

 

  慎吾が助けに来るまであと11分15秒

 

 

 



 

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る