第9話 田野森武蔵の不幸

 目の前にいるのは悪魔だった。

 「おっはーーー」

 「いや、ここは暗いから"こんばんは"か」

 独り言を言っている前の悪魔は人間の姿に近い悪魔だった。

 黒い髪と目。紫の舌に肌は白く服も着ていた。

 見た目だけでわかる相手は強いと。

 「さーて問題!!君の味方はいつ君を助けに来るでしょう?」

 どうする。

 こいつと戦って勝てるかわからない。

 なら少しでも助けを待つか。

 冴子は俺と一緒にワープさせられた。

 なら助けに来れるとしたら大介か、慎吾。

 多分だが、慎吾が来る。あいつは仲間を失うことにかなりの抵抗を持っている。

 走るのも早いので10分、悪魔がいるのなら20分と言う所だろう。

 「正解はー君が死んでから〜〜!!」

 悪魔は舌を出しながら笑う。のけぞりながら言う彼は狂気を感じた。

 

       パンッ

 

 悪魔の声だけが流れていた空間から銃声だけが響く。

 「少し黙れ」

 弾は悪魔の口を貫通していた。

 「だから君は弱いんだよ」

 急に残念そうな顔で武蔵を見る。

 「はぁ?」 

 「今のは僕の核の所を打つ所だった。それをプライドなどと頭の悪ーーい考えで急所狙わない。雑魚のする事だよ。自分のプライド優先。多分君が三年生で一番弱いでしょ?」

 プライドを馬鹿にされる。

 多分煽ってきただけではなく、しっかり自分の思っていたことを言ったのだろう。

 「一番弱いのは慎吾って言う不力無しの雑魚だよ」

 「慎吾君は化け物だよ。悪魔というより」

 悪魔が下を向いて笑顔が消えた。

 「悪魔のお前には悪魔と人間の違いもわからないんだな」

 「ん?慎吾君はねー悪魔だけど悪魔じゃないよ。あと僕にも名前あるから"ポポリオン"覚えといてね?」

 何を言っているんだこいつ。

 本当に理解できない。

 悪魔なのに悪魔じゃない?

 「じゃあそろそろ、死んで?」

 「だから黙れ」

 


  

 なんだこいつ。

 あまり強そうでなかったが悪魔は言葉を話していた。なのにもう死んでしまった。声だけを他の所から持ってきてたのか?なら本体は何処にいる?

 

       グサッ

  

 とっさにワープゲートが目の前にでき避けるが、腹に刺さる。腹をえぐったナイフを取る。

 見た事のあるナイフだった

 武蔵のか?

 どうなってるんだ

 腹を手で抑える。

 はぁはぁ

 助け呼べに行かなきゃいけないのに

 痛い

 傷口を抑えていた手が赤く染まる。

 初めてこんなに血を流した。

 息をしにくくなる。

 僕

 死ぬのか

 

 

 

 

 

 

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