第6話 不幸中の幸

 転校してきて一ヶ月に入った。

 今はバレンタインが近くなっていた。前の学校ならチョコもらえたのになーと思いながら少し涙を流す。

 可愛い女の子はいないこの学校

 未だに話しているのは大介のみ。

 大介は本当にいい奴だった。

 毎日笑顔で何を聞いても優しく返答してくれて、相談にも乗ってくれる優しい人だった。

 俺は彼よりも優しい人に会ったことがない。

 下ネタも言わない。

 悪口も言わない。

 弱音もはかない。

 かっこいいし。

 礼儀も正しい。

 

 それにとてつもなく強いらしい。

 まず、いまこの世代がとても強いらしい。 

 不力の能力はどれもかしこも弱いのはないと言われている。弱そうに見えるのもあるが使いこなされば、強くなるらしい。

       絶対に

 約二十年前は悪魔なんて世間は知らなかったらしい。

 だが突然この日本にやってきた。

 悪魔がやってきた代わりに能力を持つものが急激に増えたから、昔の代よりも今の方が強い奴は多くなっている。

 流石にベテランにも強い人はいるけど。

 そして強い奴が多い中でも頭一つ抜けてる奴が二人いるという。

      一人目が紅炎大介

      二人目が安藤冥

     「若き最強」「大黒柱」

 と言われる二人だがもう一人の安藤冥は鹿児島のほうに行っているらしい。能力育成学園は鹿児島と沖縄に二つある。

 そんなことはどうだっていい。

 大介にはいろいろなことを教えてもらった。

 まず不力には三種類あることがわかった。


 

 どんなに怪我をしても体力がある限り再生する人間

  「第一時代(ファーストシーズン) 」


  何かしらの特殊能力を持っている人間

「第二時代(セカンドシーズン)」


透明な目を持ち相手の動きをコピーすることのできる人間

   「第三時代(サードシーズン)」


 一番多いのはファーストシーズンで一番少ないのはサードシーズンらしい。

 俺からしたら全ての能力が強く見えてしまう。

 サードシーズンが一番強い不力と噂されているらしい。

 だが、光導隊や学校にもサードシーズンを持っている人はいないらしい。

 あと光導隊の仕事は悪魔を殺すだけではなく、陰(いん)という悪の組織を潰すこともらしい。 

 忙しいな。

 

 あと能力を持っていない奴はこの学園に入れない事になっているが光導隊には入ってもいい事になっている。

 入るためにはアビリティーが必須になるという。

 アビリティーとは鍛えることで能力に関係なく手に入るものである。

 そのアビリティーはとある山が二つある。

 一つ目は波動を使えるようになる事。

 二つ目は空中に浮けるようになる事。

 

 一つ目は学園から卒業する前までにはできなくてはいけない技。

 二つ目は最も難しいとも言われている技

光導隊で出来るのは1、2人ぐらいらしい。

  

 このアビリティーを手に入れるには体を鍛えるのと、誰でも持っている素力(エレメンタルパワー)を鍛える事。フィジカルだけ鍛えても意味がないらしい。

 

     正直面倒くさい。

 俺不力持ってなくてよかった再認識した。

 だって不力持ってる人不力とアビリティーどっちとも鍛えないといけない事になるじゃん。 

     不幸中の幸だった。

 

 ヤンキーと肘つき女の名前も聞いた。

 ヤンキーの名前は田野森武蔵(たのもりむさし)不力はセカンドシーズンで武器を生成すること。武器の強さはアビリティーによって変わるらしい。

 だから俺と喧嘩した時はナイフしか使えなかったのね。

 肘つき女の名前は田島冴子。

 不力はこいつもセカンドシーズンで磁力。

 いろんなものにN極やS極にすることができるらしい。磁力の量はアビリティーによって変わるらしい。

 どちらとも強い。一年生で全員がセカンドシーズンってこともあり結構注目されている。なのに俺が入ってしまった。なんか空気読めない奴みたいな感じで嫌だった。毎日特訓して寝ての繰り返しが続くのだろうか。

 そこからは死ぬほど特訓をした。時間が過ぎていくにつれて武蔵とも仲良くなっていく感じがした。ただ単に俺が話しかけてるだけだけど。

 二年生、三年生と進むうちにどんどん不力を持っている三人と持っていない俺とで差ができ始めている感じがしていた。波動を初めて使えるようになったのは俺だったがみんなどんどん使えるようになってフィジカルでは俺はまだ一番強いが不力込みだと勝てる気がしなくなっていた。

 三年生になり夏休みが終わり九月頃

 沖縄ではこの時期でもまだ暑かった。

 ミンミンとセミが発情しているのかわからんが鳴いている。

 「ドンマイドンマイ次なら勝てるよ」 

 いつもの通り大介が励ましてくれる。

 今訓練で武蔵と戦ったが完敗。

 腕や顔に傷が何個もできた。

 確かに俺も強くなっていると思う。それなのに差が埋まらない。いやさが広がっていく。本当に悔しかった。アビリティーだけではやはり厳しいと実感し始める。

 俺たちの次に大介と冴子が戦っている中俺たちは休憩の時間だった。俺の傷はそこまで深くなかったようで保健室の先生が戦闘訓練の時はグラウンドに来ているのですぐ直してもらった。

 グラウンドで腰を下ろし休憩をする

 ため息が自然と出てくる。

 こんなので悪魔は殺せるのか。

 「お前マジで学校やめろよ」

 武蔵が俺を見下ろしながら言う。

 見下ろされるのは嫌いだったので立ち上がった。

 「入学当初からこんな学校やめてーよ!!

カス」

 少しストレスが溜まっていた俺は八つ当たりをしてしまった。八つ当たりではないか、あいつが先に言ってきたんだから。

 「だから覚悟がねーんなら出てけって言ってるだろ!!!」

 「ここにいる奴は悪魔と戦うと決めて覚悟を持ってここにきたんだ。悪魔を絶滅させるためにここにいるんだ!!お前はなんだ?学校に行けと言われたが授業に出ろとは言われてねーんだろ!?ならどっか行っとけよ!!」 

 胸ぐらを掴まれてそう言われた。 

 鋭い形相で俺を睨みつけてくる。

 本当にイライラする

 何が覚悟がねーだ。

 あるからここまで来たんだろ

 イライラする

 なんでこんな奴に負けているんだ

 イライラする

 なんで俺が悪いもの扱いされなきゃいけねーんだ

 イライラする

 俺にこんなことさせたのは悪魔だったのを忘れていた事に

 決めた

 三年生が終わる前までにはこいつをボコボコにする。

 そして光導隊になったら悪魔を殺す。

 

 それで俺は自由の身になる。

 

 「離せ殺すぞ」

 勝手にくちが動いていた。何故か俺の近くを黒紫の煙が舞う。

 それにびびったのか武蔵は掴んでいた手を離す。

 絶対に絶対に殺してやる。俺は自由だったんだ。

 


 

 相変わらず武蔵君かっこいいな♡

 授業の時に鋭い目つきで先生を見ているところもとてもかっこいい。髪の毛も黒色で少しボサボサな髪型なところも好き。ペン回ししながら授業はしっかり受けてるし、頭もいい。それにとても強い。本当に見ていても飽きない。武蔵君を見ていると目があってしまった。とてもカッコ良くて顔が整っている。

 「なんだよ」

 急な問いかけ!!!!どうしよう!?!?なんだっけ!?!?ホテルいこ?いや違うなんて言えばいいのけ?

 「いや、なんでもない」

 「あっそ」

 あっそ貰いました!!!!カッコいい!!声もかっこいい。

 「見てて武蔵ーおちんちんビローーーン」

 紙にちんこを描いたズボンの上から貼っていた。

 は?何あいつ。つまらな。キモ。てか顔キモ。てか臭。キモい匂いがここまでくる。ブサイクすぎる。あいつ絶対納豆しか食べた事ないわ。武蔵君に近づかないでほしい。

 「しょうもないことすんな」

 

        ペシン

 

 武蔵君がゴミの股間にデコピンする。

 「ふんぎゃーーーーー」

 彼は床に倒れ込み悶絶していた。ざまぁみろ。

 「慎吾もバカだね」

 大介が話しかけてくる。

 「そうね」

 このツンデレみたいな喋り方は武蔵君を真似している。


   私、田島冴子は恋をしています。

 

 

 

 




 

 

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